乗り継ぎ時の「初乗り運賃」加算はおかしい

東京の鉄道は今こそ「ゾーン制」を採用すべき

では、どのような方策が考えられるだろうか。最も大きな改革は経営の一元化である。もし、現在の首都圏の多々ある鉄道網やバス路線が一鉄道事業者によるものであるなら、独占による弊害は危惧されるとしても、こうした状況は起きないであろう。しかし、歴史的経緯から首都圏ではJR、東京メトロ、都営地下鉄、多くの私鉄が入り乱れており、これらの会社の経営を一元化するのは容易なことではない。東京メトロと都営地下鉄2社の経営統合でさえもメトロが株式上場による完全民営化を目指しているなかで、都営地下鉄の多額の債務が問題となって話が進んでいない。

ただし、最近大きな動きがあった。東京メトロの山村明義社長が6月29日の就任記者会見で、東京オリンピック・パラリンピックに向け、「東京メトロと都営地下鉄で2つの初乗り運賃がある状況は特に外国人にはわかりにくい。両方を乗り継ぐ際には一本の通算運賃で利用できないか、東京都に提案している」と述べている。

運賃共通化の鍵は「初乗り運賃」の扱い

第2の方策は前述の乗り継ぎ割引などの併算割引である。これをバスも含めて拡大させることが検討できる。第3は初乗り運賃の引き下げである。2社、3社と乗り継ぎが多くなるほど料金が割高になるのは、各社ごとに初乗り運賃が加算されるからであり、これを引き下げれば運賃は格段に安くなる。これは後述の第4の通算制、共通運賃制にもかかわってくる。

パリの定期券「ナヴィゴ ディークヴェルト」(左)とソウルのT-moneyカード(右)。ナヴィゴはこのカードと写真付きの本人証明カードを重ね合わせてケースに入れて利用する(筆者撮影)

第4はソウルのような通算制である。事業者をまたがっても単純に距離に応じて運賃を決める制度である。しかし、各事業者の運賃が異なっているため、どのように調整するかという課題がある。

第5はパリのゾーン運賃のような共通運賃制である。フリーパスもこの範疇の制度だろう。これも各社の運賃がバラバラだと調整が必要となる。しかし、いずれも各社の収入が減ることになるし、システム変更も必要となるから、そう簡単な話ではない。

いちばんの問題は初乗り運賃の扱いだろう。初乗り運賃の意味には2つの考え方がある。1つは、初乗り運賃は終端費用(駅の維持にかかる費用)および輸送キロに比例する費用の合算値であるという考え方である。もう1つは、鉄道輸送にかかる費用を、輸送量にかかわらず発生する固定費用と輸送量に応じて発生する可変費用に分け、初乗り運賃はこの固定費用と可変費用の最低輸送区間分を合算したものであるという考え方である。前者の考え方を取れば、初乗り運賃は、相互直通運転あるいは改札を出ない乗り継ぎの場合は減額すべきと考えることができる。

筆者は第4の通算制や第5のゾーン制による共通運賃を目指すべきと考えるが、消費者の利益ばかり強調しても独立採算制を取る鉄道事業者にインセンティブがなければ事は進まない。また、運賃の共通化等により各社の競争意識が低下することによるサービスの低下も懸念される。独立採算確保に向けた方策としては、こうした制度導入により利用者が増大し、運賃を下げても鉄道事業者の増収になるのであればインセンティブは確保できるが、利用者の増加による増収以上に減収となる場合には新たな仕組みづくりが重要となる。

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