タカタの民事再生が一筋縄ではいかない理由 国をまたぐ債権者とスポンサーが波乱要因

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私的整理は、再建を行う企業が直接債権者と交渉し、負債の棒引きに関して同意を取り付けるのだが、タカタまでの大企業となれば、多くの債権者の利害をまとめて個別の同意を取り付けることも困難であり、現実的には難しい。

法的整理は、裁判所の監督の下、債権者集会を開催し、一気に同意を取り付ける。裁判所が借金棒引きに対し、ある程度の客観性や公平性を担保することから、私的整理より、債権者の同意を取りやすい。

この裁判所が主導して行う法的整理として、民事再生と会社更生があるのだが、会社更生は主に大企業、民事再生は中小企業が使うことを想定して法律が整備されている。

なぜ、タカタは異例の民事再生を選んだのか

会社更生の場合は、申し立て後の経営陣の残留は認められず、裁判所が選定する管財人の下で一切のモラルハザードを排除し、財産の処分が進められる。大企業の場合は、利害関係者が多いため、このような客観性や公平性がより重視されるからだ。

一方、中小企業などの場合、事業を行っていくうえで経営者の存在は重要であり、再建という苦境であればこそ経営者の続投が求められる。また、小規模取引先などへ法的整理では変則的になる優先支払いを行わなければ、連鎖倒産などを引き起こすことがあり、事業継続が難しくなるリスクが生まれることから、比較的柔軟な民事再生が適用される。

企業の大きさや負債の額を考えれば、会社更生が通常の手段であったはずのタカタだが、民事再生という選択肢を選んだのは、再建スピードを意識し、スポンサーがすでに存在していたからである。大企業としての客観性や公平性を保たなければいけない反面、協力会社など体力のない小規模の取引先が多く、何よりリコール費用がどの程度の負債額に膨れ上がるかが見えないため、柔軟な判断がしやすい民事再生を選択したのであろう。

なぜ三井住友銀行は250億円を出せたのか

民事再生の申し立てと同時に、三井住友銀行がタカタへの250億円の融資を決定し、スポンサーとして中国の寧波均勝電子が手を挙げた。これは、再生手続きの前に継続が可能な事業を切り出す「プレパッケージ(事前取りまとめ)型の民事再生」と呼ばれる。

プレパッケージ型の民事再生とは、処理が面倒な債権債務は旧会社に残していき、新しい会社に継続可能な事業を移して、その対価として、事業譲渡の代金を旧会社に支払うものである。

新しい会社は、現金や一部の債権なども引き継がないため、新しい運転資金が必要となることから、今回は、三井住友銀行が250億円の融資を行うこととなっている。

新しい会社は、債権債務を引き継いでこないため、まったくもってきれいな財務状態であり、事業が生きていれば、将来的にはすぐに現金を生むことから、銀行は申し立ての初日でも融資の意思決定が可能なのである。

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