子どもの「精神障害」はかなり誤解されている

児童精神科医・滝川一廣さんが語る「歴史」

――診断がくだれば、皆、同じ治療で治るわけではないということですね。

本の冒頭にある、「認識の発達」水準を縦軸に、「関係の発達」水準を横軸に取った座標が目に飛び込んできます。

A領域:知的障害、B領域:自閉症、C領域:アスペルガー症候群、T領域:定型発達と表示されています。しかし、線で明確に区分されているわけではありません。

人間の赤ちゃんが見知らぬ新しい世界を知っていくのが「認識の発達」。世界に働きかけ、働きかけられる関係性を育んでいくのが「関係の発達」。これがXとYの座標軸として置かれます。そして両者が相互に支え合い、子どもは成長していくという、発達を示した図ですね。この図は滝川さんのオリジナルですか。

ええ、そうです。こうすることで、この子は認識に課題をもつ知的障害、この子は自閉症、と分けるのではなくて、定型発達も含めてひとつながりだということが見て取れます。

子どもには「ばらつき」がある

――私たちはいつの間にか、子どもというのは、どの子も似たような存在で、成長は一直線上にあるようなイメージを持っています。でもこの図は、子どもにはばらつきがあることを思い出させてくれます。地図のようで、思わずわが子や自分がどこにいるのだろうかと探したくなります。

子どもには、生まれたときが最もばらつきがある。それが、成長の過程で、精神発達を遂げた大人たちや環境に働きかけ、働きかけられ、認知と関係性をそれぞれ発達させ、その社会と文化を生きることができる存在へと育っていきます。

――精神障害は、社会や文化の変化の中で発見されてきたのですね。

昔から「知恵遅れ」とか「白痴」という言葉があり、理解や判断力が落ちている人がいることはわかっていました。しかし、知的障害がクローズアップされたのは、19世紀に近代学校教育が始まってからです。

また、関係の発達の課題が発見されるのは1943年。アメリカの児童精神科医のカナーが自閉症を報告してからです。それまで関係性発達障害は問題になりませんでした。

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