借金10億円の旅館を甦らせた素人女将の奮闘 追い詰められ週休3日にしたら逆に激変した

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「昔からのしきたりを守るのも大切です。でも今は、そんなことを言っていられる状況ではない。旅館を守るためには、やらなきゃならないんです」(知子さん)

旅館の経営状況がこれほどまでにひどいとは知らない人も多かったため、泥舟に乗っていられないという人、今まで以外の仕事はしたくないという人、あの人と働きたくないという人など、社員は徐々に減っていった。改革から数カ月後、30人いた社員は、わずか20人ほどに。

旅館は一転、深刻な人手不足に陥った。ここで、女将と主人は、さらなる旅館改革に着手する。夫・富夫さんは、元エンジニア。その知識を活かし、新たなITシステムを、数カ月かけて開発、旅館に導入したのだ。

ITの導入で効率化が進んだ

少ない人数で旅館を運営できる、そのシステムとは音声の文字化である。たとえば「デザートが小玉スイカに変更になります」と、女将が言葉で指示すると、それが音声ソフトにより自動的に文字化。これが、旅館スタッフ全員が持つタブレットに送信され、やりとりを確認することができるというシステムだ。

厨房にある大型モニターには、宿泊客のアレルギーの有無や、料理の希望、さらには、好みの温度設定まで、細かく記されるようにした。これらの情報も、パソコンやタブレットを通じ、全従業員が共有。おかげで、1人で複数の仕事をこなせるようになり、少ない人数で、きめ細かなサービスができるようになった。

こうして、再生への第一歩を踏み出した崖っぷち旅館。しかし女将は、さらなる試練を抱えていた。

女将と母親の両立ができないピンチが大チャンスに

31歳で、借金10億円を抱える老舗旅館の女将になった知子さん。そんな彼女に余儀なくされた、さらなる試練が「女将業と子育ての両立」。知子さんが女将になった時、上の子供は2歳。下の子は、わずか生後2カ月だった。

最初の3年間、知子さんは1日の休みも取らなかったという。億単位の借金を抱えた女将業と、2人の子育て……知子さんの精神は限界に近づいていたのだ。そして、女将になって3年が過ぎた2013年、ついに知子さんは決断する。

「このままずっとやり続けるのは難しいなと」(知子さん)

女将など続けられない。しかしこの窮地が、借金10億円の崖っぷち旅館を再生する最大の改革を生む。その改革とは旅館としての営業を週休3日制としたことだ。

もちろん最初は、従業員も銀行も大反対。しかし、ふたを開けてみれば、利益は増えたのだという。3日も休んで利益が上がったとは、一体、どういうことなのか?

夫婦の支え合いで老舗旅館は大きく生まれ変わった。TBSテレビ「結婚したら人生劇変!○○の妻たち」次回は6月26日(月)よる7時から放送です

温泉旅館の場合、宿泊客は、週末に集中する。そこで、お客の少ない月曜から水曜の宿泊客を受け付けない(月曜は原則として日帰りランチ営業のみ)ことで、経費の大幅な削減に成功。休日をしっかり設けることで、従業員の集中力が増し、サービスの向上につながった。実際に、7日間フルに営業していた時と比べてみると、利益は、大幅に増えている。

そして今、知子さんは休館日に、さみしい思いをさせていた子供達と過ごせるようになった。子ども達の反応は?

「休館日、賛成! お母さんがいるから」(子供)

最大のピンチを乗り越え、今も戦い続ける女将。最後に、こんな質問を……崖っぷち旅館に嫁いで、正解? それとも、後悔?

「正解かわからないけど、後悔はしていない。大変な時もあったし、困った時もあったけど血となり、肉となり、糧になったかなと思います」(知子さん)

TBSテレビ『結婚したら人生劇変!〇〇の妻たち』取材班

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『結婚したら人生劇変!〇〇の妻たち』はTBSテレビのドキュメンタリー番組。さまざまな夫婦の形と人間ドラマを密着映像と再現映像で描く。

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