「仮面夫婦」を10年続けた人の苦悩と活路 離婚してわかった「失敗の原因」と「幸福」

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「36歳のときに出会った13歳年下の女の子を本気で好きになり、まだ離婚していないことも正直に伝えて付き合いました。その子と結婚したかったので、前の嫁と離婚に踏み切ることもできたんです。結局、別れてしまいましたが……」

いよいよ1人きりになった直人さん。出会い系サイトを使った婚活を加速させる。しかし、結婚を前提に付き合うとなると「子あり、家あり」は大きなハンディキャップだと知った。

「まだまだ養育費はかかるし、家のローンも残っています。仲良くなった女の子からは『結婚したらその家に住まなくちゃいけないの? どうしても?』とよく聞かれました」

実家の土地に建てた一軒家。地方都市の駅からも離れた場所だ。転売をすることは難しい。一時は前妻や子どもたちが住んだ思い出も残る。新たに一緒に住む女性を見つけるハードルは高い。

現在の妻との出会い

一方で、直人さんは東海地方では名の知られた優良企業に勤めており、背も高く、男らしい風貌をしている。良さそうな女性がいたら、迷わずに突進する勢いもある。「振られるのが怖い」などと言っている余裕はないのだ。行動あるのみ。バツイチの男性が再婚しやすい理由かもしれない。そして、現在の妻である綾子さん(仮名、43歳)とめぐりあう。

「出会い系サイトでは、プロフィール写真よりも実物のほうがキレイなことはほぼありません。でも、嫁は『おおっ』と思うぐらい美人でした」

前妻との結婚生活には失敗した直人さんだが、最初は見た目が大事なのだ。結婚の前に恋愛があるのだから当然なのかもしれない。ただし、今度は性格的な相性も良かった。

「似ているわけではありません。僕は怒ったときは何も話さなくなってしまうタイプです。前の嫁も同じような性格で、お互いにムスッとしたまま何も解決しないことが多かった。でも、今の嫁は何でもハッキリと言ってくれます。問題を解消しようとしているのか、単に不満をぶちまけているのかわかりませんけど(笑)。おかげで、ケンカをしてもすぐに仲直りすることができています」

現在、綾子さんは失業保険をもらいながら求職中だ。ずっと実家暮らしだったこともあり、家事や家計のやりくりは得意ではない。洋服代もかさんでしまう。養育費やローン返済を含めると、直人さんの収入だけでは赤字である。小さなケンカも絶えない。それでも直人さんは幸せそうだ。

「家に帰ると電気がついていて料理があるのはうれしいですね。嫁は面白い人で、前の嫁の情報を聞きつけてきて、職場の飲食店までわざわざ見に行ったみたいです。『レジのところにいたよ』なんて僕に報告してきます。何を考えているのかよくわかりません。面白くていい人をもらったな、とは思っています」

綾子さんと前妻との違いはいろいろあるだろうが、ひとつは実家と適切な距離を取れるかどうかに違いがあると筆者は思う。実家の親が元気で、なおかつ子離れしない場合、「他人」との新居よりも慣れ親しんだ実家のほうが居心地が良いのは当たり前だ。しかし、結婚相手も両親から巣立って結婚生活を営もうとしていることを忘れてはいけない。基本的には夫婦だけで新しい家庭を築いていくのだ。実家を安易な逃げ場にしたら、相手の立つ瀬がなくなってしまう。赤字の家計と向き合いながらも新婚生活を面白がりながら過ごしている直人さんに幸あれ。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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