熱狂的トランプ支持者は今どうしているのか 若年層では支持率が伸びていた!

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遠足の当日は、パリ協定離脱宣言からわずか数日しか経っていなかったこともあって、親の1人が「地球温暖化なんてうそっぱち。こんなに寒いのだから地球冷却化と呼ぶべきだ」と冗談を言ったのが悲劇の始まりとなった。

この発言に対し、別の親が「トランプが世界的にも恥ずかしい決断をした後で、どうしてそんな無神経な冗談を言えるのか」と食ってかかった。しかし、この言葉を聞いた超保守派の親2人が猛反撃に出たのである。彼らはそろって、「ジョン・コールマンですら、地球温暖化なんてうそだと言った」と言い返した。

ジョン・コールマンは、気象情報最大手のウェザー・チャンネルの創始者であり、気象学会の超大物。彼はつい最近、1970年から現在までのデータを並べて、「地球はまったく温暖化していない。地球の歴史上、温暖化や氷河期などは交互に起こるもの」と発言し、トランプ大統領のパリ協定離脱を支持したのだ。

周りが仲裁に入っても…

ちなみにアメリカの気象学専門家の中には、地球温暖化へ懐疑的な見方をする人は少なくない事実もある。NASAですら地球温暖化の証拠はないという発表をしたこともあり、そのデータや説明を聞けば、「そうか、地球は温暖化ではないのか」と納得しそうになってしまう。ちなみに地球温暖化を支持する人にとっては、言うまでもなくコールマン氏のほうこそ疑うべき存在。科学ど素人の私などでは、さっぱり何が事実なのか、まるでわからない。

地球温暖化について、どんな科学的背景を信じるかは個人の自由だが、これが政治問題と絡んでくるとややこしいことにしかならない。保守派の親たちの「地球温暖化はうそっぱち」というこの言葉が決定打となり、平和なはずの幼稚園の遠足は、戦場と化した。

保守の2人に反撃したリベラルの親が、「保守派は科学の常識を理解しようともせず、教養がない」などと言い出したものだから、状況はさらに悪化。その場はトランプ政権反対のリベラルと、それを支持する保守の戦いになり、最後には地球温暖化は、どうでもよい話題に。最終的に話はトランプ支持なのか否かに集中。のどかな森の中に響き渡る罵倒……呆気に取られる子供たち、仲裁に入ろうとして、とばっちりを受けまくる学校の先生と親数人(私はこの数人に入る)。

シアトル市内のようにリベラル一色の地域にいたり、中西部でトランプ支持一色の地域にいたりすれば、こうした言い争いは少ないかもしれない。けれども、そのバランスが微妙な地域に住んでいるかぎり、こうした小競り合いは結構多く、その度に私のような人はヘトヘトに疲弊してしまう。

トランプ大統領の支持者は減っているデータがあるのは事実であっても、熱心な支持者というものはたとえリベラル寄りの土地にも根強く存在している。そのため、トランプ政権の評価については、大手報道機関のニュースだけを頼りにすると、アメリカの全体像について大きな誤解をしてしまう可能性もあるといえるだろう。

ジュンコ・グッドイヤー Agentic LLC代表、Generativity Lab代表

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Junko Goodyear

アメリカ在住。青山学院大学卒業。日本にて約20年の企業経営のち、現職。日本企業のアメリカ進出、アメリカ企業の日本進出のコンサルテーション&サポートほかを行っている。シアトル近郊最大の子供劇団のひとつ『Kitsap Children’s Musical Theatre』顧問を務めながら、次世代継承と・社会還元共有型マーケティングを考える『ジェネラティビティ・ラボ』も主宰している。

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