佐川急便やヤフーが進める「週休3日」の盲点 利点も大きいが過重労働や待遇悪化も

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これと同様に、育児や介護のために週休3日で働くことになり、収入が減少した社員に対する給付金や、週休3日の正社員制度を導入した企業に助成金を出すなど、公的支援制度を充実させれば、導入する企業や利用する社員も増えそうだ。

また、金銭的な不安はなくとも、責任感が強い人は「週休3日になったら仕事が回らない」とか「顧客や同僚に迷惑をかけてしまう」というような理由で、週休3日の制度の利用に踏み切れないかもしれない。会社側は、形式的に「週休3日の正社員制度」を導入するだけではなく、安心して制度が利用できるような社内の業務フローやシステムの整備、あるいは代替要員の配置なども併せて検討すべきであろう。

所定出勤日が1日減っても、出勤日当たりの労働時間が変わらずに基本給や賞与などの待遇は週休2日のときと同等の条件が維持される仕組みが導入できれば、理想的だ。

ただし、現時点においての実例として、週休2日と同等の賃金水準を維持したまま、全社的に週休3日を実現できた会社を私は知らない。いったん会社全体を週休3日にしてしまうと、簡単には後戻りができないので、導入には相当な覚悟が必要になる。

万が一、うまくいかなくて週休2日に戻す場合、「労働条件の不利益変更」の問題にぶつかることになる。週休3日を2日に戻す場合には、労働契約法の定めにより、原則として全社員の同意を得なければならない。

もし、社員の同意を得ないまま、一度、完全な週休3日制を導入した会社が、独断で週休2日に戻してしまうと、万が一裁判沙汰になった場合、「就業規則の不利益変更は無効なので、週5日の出勤日のうち、1日は休日出勤だった」という判決が出て、多額の休日出勤手当を負担しなければならなくなってしまうリスクがある。

本当の意味での「週休3日」

昨今はIT技術が急速に進歩しているので、業務の効率化や、人力で行っていた仕事の自動化などを通じて生産性を高め、本当の意味での「週休3日」を実現することが可能な時代が来ることを期待したいものである。

結局のところ、週休3日の正社員制度は、単純に「1日休みが増えるからラッキー」という話ではないし、会社としても、コンプライアンスや労務管理の観点から慎重な対応が求められる制度であるということがわかるはずだ。

会社によって事情はさまざまなので、「今はやりの人事制度だから」ということで、安易に週休3日制の導入に走るのは危険である。「自社の社員が何を望んでいるのか」「どうすれば働きやすくなると思っているのか」を見極めるためにアンケートを取ったり、個別のヒアリング面談をしたりすることなどから始め、自社に合った働き方を見つけていってほしい。

社内調査を踏まえたうえで、週休3日の正社員制度を導入する方針になったとしても、「単純に休日を3日間にする」というだけではまだ短絡的である。会社の方針や社員のニーズを具体的に酌み取ることができれば、たとえば「仕事が終わっていれば、出社を免除する」「自己啓発の目的があり、上司が承認したら休んでよい」「まずは隔週で週休3日にしてみる」といったような、自社最適にアレンジされた週休3日制のアイデアも、いろいろと出てくることが望ましい。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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