佐川急便やヤフーが進める「週休3日」の盲点 利点も大きいが過重労働や待遇悪化も

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一方、週休3日を導入した場合、それぞれのタイプによって課題も出てくる。

「時間配分変更タイプ」については、社員の健康管理と残業代計算が課題となる。佐川急便は、週休3日の正社員には休日の副業も認めるということであるが、佐川急便の勤務だけで10時間×4日=40時間となるので、すでに法定の労働時間は本業で使い切っているということになる。

社員が副業を自営業として行うなら話は別だが、副業を他社の労働者として行う場合は、労働基準法上、両者の労働時間は通算されるので、副業側はすべて時間外労働ということになってしまう。

この場合、佐川急便が当該時間外労働の管理義務を負っているわけではないが、社外でどれくらい働いているのかということを申告させ、労働時間が過剰になる場合は、副業の時間を抑えるように助言するなど、社員が健康を壊さないようにするための対応が必要だと思われる。

そして、副業側の会社は、佐川急便の週休3日制の正社員で働いている人を新たに雇用する場合には、すべての労働時間に対し割増賃金を払わなければならないので、この点には気をつけてほしい。

なお、すでに副業を持っている人が、週休3日の正社員として佐川急便に入社してきた場合には、逆に佐川急便側が割増賃金を支払わなければならない可能性がある。

このように「時間配分変更タイプ」は、週休3日といっても、単なる労働時間の配分の変更にすぎないということを意識してほしい。使い方を間違えると、むしろサービス残業や過重労働の温床になってしまう可能性がある。

生活が成り立たないという懸念もある

次に「時短タイプ」は、金銭的な理由によって利用が進まない可能性がある。いくら休日が増えても、その分賃金が減ってしまうとなると、生活が成り立たないという懸念で制度利用が進まないおそれがある。

この点、国の制度による支援が有効かもしれない。現在、女性社員が育児休業を取得するのは当たり前の風景になり、少しずつではあるが、男性の育児休業取得も増えつつある。

多くの人が育児休業を取得できるのは、休業補償として「育児休業給付金」が給付されたり、また、育児休業の取得期間中は労使共に社会保険料が免除されたりなど、公的な支援制度が整っているからだ。育児休業を取得した社員を職場復帰させた場合、男性に育児休業を取得させた場合などに企業に対して支払われる助成金メニューも充実している。

次ページ公的支援制度を充実させれば導入企業も増える?
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