「オレは話聞いてないぞ!オジサン」の処方箋 まともに相手をしていたら時間がなくなる!

✎ 1〜 ✎ 34 ✎ 35 ✎ 36 ✎ 最新
拡大
縮小

私の場合、話聞いてないおじさん向けの対応策をいくつか講じています。
代表的な対策は以下の3つです。

話聞いてないオジサン対策

(1)説明会や情報提供を徹底的に実施して、「聞いてないほうがおかしい」という状態にする

地域での新規事業の際には、あまりに聞いてないオジサン対策として、「ここまで機会をつくっているのに聞いてないほうがおかしい」という状況をつくることがあげられます。

過去には、1年間、毎月複数回、ひたすら各商店会長や町会長らといった会長クラスを集めて勉強会を開催したことがあります。ときには平日・土日で日中と夜に一気に説明会を開催したこともありました。個別対応よりはよっぽど楽ですし、何より、関心を持った多くの人が説明会などに参加してくれますし、結果として協力者も増加するという「よい副産物」もあります。

(2)「話を聞く場」と、「事業の意思決定の場」を分ける

とはいえ「人の意見を聞かない(聞く耳を持たない)」というだけで、なんとなく人間としてダメみたいな風潮は、いまだに強く残っています。そのため、私は「協議会的な組織」を立ち上げて、そこに地域のさまざまな人に入ってもらい、定期的に事業報告などを行ったりします。年次報告書を出したりする場合もあります。

しかしながら、それはあくまで協議組織。事業会社側はちゃんとリスクを負って、事業に取り組む少数の関係者で立ち上げ、経営します。「意見は聞くけど、採用するかどうかは経営判断」というスタンスが、いちばん事業をスムーズに動かします。

(3) 勝てば官軍。成果を急いで、手柄を渡せ!

まぁ何をやっても、聞いてないという人は減らないです。いちばんの対策はこれかもしれません。急いで小さくとも成果を生み出し、その手柄を「聞いてないオジサン」におすそ分けするのです。大抵の場合は、うまくいき始めると「オレも最初からあれはうまくいくと思ってた」「オレが最初に支援してやった」といったようなオジサンはたくさん出てきます。

つまり、話聞いてないオジサンにあまり気をもむ必要はないのです。事業を軌道にのせて官軍となれば、あとはどうにかなることばかりです。そのときに話聞いてないといっていたオジサンに、「いや〜◯◯さんのおかげですよ」という話をして、マスコミ取材などの一部をその人にもしてもらうように段取りをつければ、「私は今後とも応援していきます」とかコメントして協力者になってくれることが多くあります。

あまり初期の段階で「聞いてないオジサン」と対立し、論破でもしようものならば、さらに溝が深まります。最初は効率的な説明会や意思決定では関与しないように程よく付き合い、早急に事業の成果を生み出し、その手柄を分ける、それがいちばんの処方箋です。実は手柄なんて一銭にもなりませんので、あげられるものはあげてしまうのがいちばんです。

木下 斉 まちビジネス事業家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT