VISA、目立たぬ「金融の巨人」知られざる正体

本質は金融というよりテクノロジーにある

VISAはそうした「地域ごとの違い」を前提としながら、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードについて、決済インフラをテクノロジーで整備しながら事業として取り込んできた。フィンテックというと、何か「はやりもの」のようなイメージを持つ人もいるかもしれないが、こうした事業基盤を持つ国際ブランドは、「地に足がついたフィンテック」を語るうえでは、外すことができないプレーヤーなのである。

Apple Payも頼った既存の決済インフラ

『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

こうした決済インフラは、自社ブランドのカードなど以外でも使われている。

アップルは2016年秋、iPhone7などでクレジットカードを携帯することなく決済ができる「Apple Pay」のサービスを、日本でも開始した。このApple Payは、簡単にいえば既存のクレジットカードやデビットカード、プリペイドカードの決済端末およびそのシステムを活用している。

Apple Payでは、カード情報のうち決済に必要な情報がiPhone上で「トークン」と呼ばれるデータとなり、それをVISAなどのトークンを提供している企業が処理することで決済ができるようになっている。VISAであれば、Visa Token Serviceと呼ばれるものを提供している。こうしてみると、Apple Payは既存の決済インフラと国際ブランドのテクノロジーの上にしっかりと載っかっているということが言える。

では、なぜアップルがApple Payのサービスを開始するにあたって、既存の決済インフラを採用したのか。それはサービスの「スケール(規模)」とその「展開スピード」を重視したからと推測できる。

先ほど指摘したように、決済方法やその好み、特徴は国や地域によって大きく異なる。それらにすでに対応した決済インフラを持つ国際ブランドを活用するほうが、地域の網羅性と事業展開のスピードが速いと踏んだ結果だろう。

少し余談になるが、アップルはイノベーティブな商品とサービスを提供する会社として有名だが、別の顔を持っている。アップルの得意とするのは「既設のインフラに上手に乗ること」だ。

考えてみればiPhoneも、携帯電話などの通信インフラが「GSM」と呼ばれる方式などから「3G(第3世代移動通信システム)」へと変化していく中で、つまり通信会社がインフラ投資に邁進していく中で、そのアップグレードに便乗したことになる。初代iPhoneは2007年に発売されたが、販売数量が大きく伸びるのは、この3G通信に対応したiPhone 3Gが発売されて以降である。

そうした観点から見れば、Apple Payのサービスを始める際に既存の決済インフラを最大限に利用したことは十分理解ができる。金融を支える「決済」の手段や方法は、今後もテクノロジーの状況によって変わっていくだろうが、それらを読み解いていくときにVISAの動きはひそかに目が離せない。

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