「中国封じ込め政策」は、東南アジアで機能するか
安倍総理が今年1月のタイ、ベトナム、インドネシア、5月のミャンマー訪問において、事実上の「中国封じ込め」政策を強調していたことは記憶に新しいはずだ。だが、現場に近いほうの感覚からいわせてもらうと、中国封じ込めどころか、すでに周辺国家は、かなり中国化していることに気がついていないように見える。ただ、中国化といっても、中国一辺倒かといえば、そうでもないことも事実だ。
たとえば、ベトナムだ。同国は、これまで6回も中国と戦った経験から、領土問題(南沙諸島や西沙諸島)においても、言うべきことは遠慮なくいいながらも、実にうまいバランスを取った外交関係を築いている。また、ミャンマーやラオスは、この数百年の歴史から、中国民族が侵入してきているので、言語も経済面でもすでに中国化が進んでいる。
一見、日本の顔を立ててはいるが「中国封じ込め」政策とは名ばかりだ。各国は、本当は日本を「噛ませ犬」にするためにリップサービスしているだけである。競争をあおった、したたかなやり口である。
その証拠に、どの国においても、日本のODA(政府開発援助)の予算がすべて「生き金」になるかというと、そうは問屋がおろさない。例えば、ミャンマーでは、「通信網緊急改善計画」では、住友商事とNECの連合軍が何とか契約を結んだが、一番おいしい携帯電話事業の免許入札では、確実視されていたKDDI・住友商事連合は落選した(同事業はノルウェーのテレノールとカタールテレコムが獲得。今後15年間の事業免許が付与された)。
日本は対ミャンマー滞留債務の2000億円を免除し、およそ5000億円の債務を解消するほか、新たに円借款と無償資金協力を併せて総額910億円の追加ODAを今年度中に実施する。破格の支援を実行する日本が、携帯電話事業の入札で、なぜカタールやノルウェーごときに負けるのか理解に苦しむ。表立ってはいいにくいが、債務免除の見返りに、主力プロジェクトをあらかじめ約束させるのが裏外交の腕の見せどころではないのか?日本国民の血税が「死に金」になっていることに、憤りを感じる。
地方の競争で成長するはずが、逆に地方が足枷に
だが、極めて戦略的に動いてきたはずの中国も、経済成長にかげりが見え始めている。すでに今年の年初から、中国の不動産市況の値崩れが加速し始めた。もしも、中国のバブルが崩壊するとすればシャドーバンキングの存在がそのトリガーを引くのではないか、とささやかれていた矢先である。
習近平体制の中国では、今年になってから本格的に金融の引き締めを進めてシャドーバンキングへの資金流入を規制してきた。ところが、それが国内金利の上昇につながり、逆に資金の流入がストップしてシャドーバンキングの借入先が破綻する可能性も出てきたため、軟着陸をするために、規制を緩める方針を取ったようだ。
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