iPhone「82歳日本人開発者」は何がスゴイのか クックCEO「私たちは勇気づけられました」

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「次のアプリは?」とクック氏に聞かれた若宮氏は、次のように語った。

「次のアプリも、シニア世代が喜ぶ、日本の伝統や文化を次の世代に伝えられるようなアプリにしたいと思っています。でもその前に、今は、Swiftをもっと勉強しなければならない。ゲームアプリは子ども向けばかりでシニア世代は遊べなかったので、みんなが使えるようなアプリを作りたいと思います」

「親子3代で楽しめるゲームアプリ」。これが若宮氏のプロジェクトだという。

若宮氏は、好奇心があふれ出るような人柄だ。つねに新しいことにチャレンジし続けており、それを楽しんでいることがうかがえた。そのことは、クック氏に対して「Swiftをもっともっと勉強したい」と話したことにも表れている。

アプリ開発から完成するまで「5カ月」

iPhoneアプリ開発を始めてhinadanが完成するまで、およそ5カ月。若宮氏は、「アップルのアプリ開発言語Swiftが学びやすかったから、完成までたどり着けた」と振り返る。ただし、多くの情報が英語であることから、諸外国の人とくらべてハードルが上がってしまっているのではないか、と指摘した。

ただし、プログラミングに対して、恐れる必要はないとも言う。それは、若宮氏がアプリを完成させたことが何よりの証拠、というわけだ。若宮氏の好奇心が今回のWWDC参加へつながったが、アプリ開発のダイナミズムについて、若宮氏は次のように語った。

「私にとってアプリ開発は、現在の楽しみで、自分たちのために作ってきました。まだまだ勉強したいし、今のアプリも直したいところがたくさんあります。ただ、好奇心に任せて始めたアプリが、いつのまにか、世界の人に知ってもらえて、こんなに大規模なイベントに呼んでいただけて、また同じようにアプリを開発する世界中の人たちがたくさんいることを目の当たりにして、驚きを隠すことができません」

既存のスマートフォンアプリを使用するだけでも、個人の生活や仕事のさまざまな側面をサポートしてくれる。しかしこれに「自らプログラミングする」という行為が結びつくと、さらに大きな力が生まれる。世の中に対し、変化の波を作り出せるようになる。それがモバイル時代の変革だ。若宮氏の挑戦は、この変化を作り出す輪の中に、多様な人々が参加できることを体現している。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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