iPhone「82歳日本人開発者」は何がスゴイのか クックCEO「私たちは勇気づけられました」
若宮氏が「こんな大変なところに招いていただき光栄です」と話しかけると、クック氏は「あなたは、私たちにとって、とても勇気づけられる存在です」と応じ、hinadanアプリのデモを英語で披露する若宮氏に、クック氏が熱心に耳を傾ける様子が印象的だった。
アップルはこれまでのWWDCでも、ダイバーシティ、つまり「性別」や「人種」などの多様性に対して、非常に注意深く気づかい、またそのことを基調講演の冒頭でも紹介してきた経緯がある。その意味で、若宮氏は「世代」における多様性を象徴するような存在といえるだろう。
このことの重要性は、クック氏と若宮氏との会話からも伺うことができた。
シニア世代だからこそわかる、アプリの工夫
クック氏も感心したのが、シニア世代だからこそわかる、シニア世代向けのアプリの工夫だった。
若宮氏のアプリ「hinadan」では、スワイプ操作を使用せず、タップだけで遊べるようになっている。「手先の敏感な動きが要求されるスワイプ操作は、シニア世代にとっては難しい操作」と話す若宮氏。同世代に対してテクノロジーのことを教える機会も多い同氏ならではの気づきだった。
また、正解や間違いでは音が鳴る仕組みだが、耳が不自由な方もいることから、文字でも正解・不正解を表示するようにしたという。
そんな若宮氏の工夫を聞いて、クック氏は「文字のサイズについてどう思いますか?」と尋ねた。
若宮氏は、「やはりそこは一番心配するところです。iPadのほうが大きくて見やすいですね。ただ、iPhoneとiPadで、画面の縦横比が違うので、レイアウトをそのまま移植することが難しかったです」と、開発環境における技術的な制約について指摘。
それに対してクック氏、「私も視力に問題があるので、大きな画面で楽しめるようになると、とても助かりますね」と答えていた。問題に共感してもらえた若宮氏は感激し、2人は抱擁を交わしていた。
若宮氏のゲームは、テーマ、操作性の上から、彼女が言うとおり、シニア世代も楽しめるアプリに仕上がっている。これまでアプリ開発は、若い人を中心としたものであり、シニア世代が活躍する市場とはいえなかった。
しかしスマートフォンがもっと普及するためには、国や地域、世代など、更なる多様性の拡がりが必須だ。その世代の人々が開発に携わることは、アップルにとって、そしてスマートフォンユーザーにとって、大きな進歩となる。
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