在日中国人がFX取引に「ハマっている」理由 いずれは「ミセスワタナベ」を超える日が来る
夫には失敗したことは話せても、損した金額までは正直に言えず、「すごく損をしたからやめたいと言いました。でも、具体的な金額を知らない主人は、『大丈夫、頑張ってみなさい』って言うんです。それで私もようやく本気になれました。初めて投資本を読んで、値動きにトレンドがあることを知りました。それまでチャートを見たこともありませんでしたから。FX会社が開催しているオンラインセミナーを見始めたのもその頃です。それでも、なかなか勝てずに2、3年は負け続けていましたね。FXはある程度の知識も必要ですが、それよりももっと経験が大事です。経験してから本を読んだほうが理解しやすいし、より知識も深まると思います」と話す。
実は、Zさんの夫もFXにチャレンジしてみたが、「もともと勉強家タイプの主人は、『いったい何回読むの?』って言いたくなるくらい、本ばかり読んでいました。ようやく取引を始めたけれど、まるでダメ。まったく勝てなくて、私のほうから『才能がないからやめなさい』と」(笑)。夫の失敗もあり、あらためて経験を積むことの大切さ、感性を磨くことの必要性を確認したそうだ。
「儲けはほどほどに」が勝利のコツ
では、Zさんは経験から何を学んだのだろう。
たとえば、「投資家の見方が売りと買いのどちらかに傾きすぎているときは、相場を動かす材料がすでに織り込まれていることが多いため、値動きを追いかけすぎないようにしている」ことだ。確かに、買ったところが高値、売ったところが安値になってしまうというトレーダーの声は多い。追いかけずに、次の動きを待ったほうが確実性は高まりそうだ。
もうひとつ。「テクニカルはたくさんありすぎるので、わかりやすいもの、自分と相性がいいものだけを使っているし、それでいいと思う。ただし、使うのがたったひとつでは確証が持てないので、『エリオット波動』や『トレンドライン』『MACD』など、2つ以上をあわせて使うことで、確率を高めたほうがいい」ことなどをあげてくれた。テクニカルは研究し始めるとキリがなく、指標の数値設定を気にするトレーダーもいる。だが、利益をあげているトレーダーほど、テクニカルはシンプルにしていることが多い。Zさんのように相性のいいものだけ、理解できるものだけを使いこなしていくのもいいだろう。
また、「勝っているときこそ、調子に乗らないこと。調子に乗ると、失敗することがとても多いから。あとは、子どもが家にいる夜はトレードしません。家族との生活がいちばんですから。無理をしないことが、FXを長く続けていくコツです。勝てるようになれば、FXは生活にとても役立ちますよ。アベノミクスで2012年末からドル円相場がドル高に振れたときは、1カ月で400万円ほどの利益が出て、車を買いましたし、結局家を買えたのもFXのおかげです。子どもを塾に通わせる助けにもなりました。調子に乗って失敗した経験から学んだので、ほどほどの利益が出たら、その日のトレードは終わりにします。トレードには冷静さが必要ですから」と、話してくれた。
もちろん、皆がFXで勝てるようになるとは限らない。本当に、日本で暮らす中国人の間では、ZさんのようにFX取引を始める人が増えているのだろうか。「そう。たくさんいますよ。『中国版LINE』のウィーチャットのFXグループは私が作ったのですが、今は100名ほど仲間が集まって、つねに情報交換しています。主にIT業界の人が多いかな。仕事中にパソコンを見ながら取引できますから(笑)。大半はサラリーマンの男性ですが、中には私のように主婦の方もいて、みんな積極的に取引しています」と話す。ウィーチャットにはほかのFXグループも多数あり、注目度が高まっていることは確かだろう。
Zさんは、「今年に入って、中国でも個人の為替取引を緩和しようとする動きが出始めています。もし、緩和されれば、中国でも大ブームになるかもしれない。中国人は稼ぐことが好きだから」とも話す。数年前、日本の個人トレーダーを「ミセスワタナベ」と総称し、レートを動かすほどの盛り上がりが注目されたが、もし、「ミセスワタナベ」の中国人バージョン「ミセスリー」が誕生すれば、その規模は日本の比ではないだろう。今後に注目だ。
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