村上銘柄「黒田電気」取締役候補の思いとは? 安延申氏が村上世彰氏の要請を受けたワケ

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——会社側は株主提案に3つの理由を挙げて反対している。第一の反対理由に「特定の株主からの意向を強く受ける状態が継続する可能性すら惹起し」と書いてある。

5月15日、東京・南大井の本社で指名委員会による65分間の私への面接の際、冒頭で「特定の株主の利益を代表して行動するつもりはない」と明確に申し上げたし、これは村上さん側にも伝えてある。にも拘わらず、こういう理由が挙げられるというのは、はなはだ遺憾。旧村上ファンドの人たちも「会社価値が上がればいいのであって、個別の戦略は議論してもらって取捨選択すればいい」と言っているのではないでしょうか。

幸いに私は過去の経験から、電子部品や半導体のメーカー、ユーザーともに多くの知己がある。これから伸びると言われている自動車などのIoT部門にもそれなりの人脈があるので、M&Aにしても営業にしても、いろいろな人を紹介できるし、応援できると思っているのだが。

ガバナンスが改善しているとは言い難い

——第二の反対理由として、株主提案で「(2年前に従業員団体の反対声明を黒田電気の関係者が捏造するなどのコーポレート・ガバナンスの不備を挙げているが、)ガバナンスが改善しているのでさらなる社外取締役の選任は必要性は乏しい」としている。

「特定の株主の利益を代弁することはない」と語る安延氏(編集部撮影)

韓国サムスン電子が国際商業会議所に仲裁申し立て(黒田電気など3社に計4億ドル)をし、その申立書を1月5日に受理しているのに、同19日まで情報開示しなかったことを見ても、ガバナンスが改善しているとは言い難い。

——第3の理由は「今期中に300万株(総額80億円)程度の自己株取得を実施するために社外取締役1名の選任を求めているが、本来独立性を有すべき人材を通じて具体的な経営判断に介入することに繋がる」とするものだ。

電子部品業界では自己株取得をする上場企業が多い。それは分母を減らすことでROEを上げるためだ。黒田電気の低いROEを上げるのにも自己株取得は良い選択肢である。

私は黒田電気の現経営陣が、なぜたった1人の取締役選任を頑なに拒絶しているのかがわからない。

2015年に持株比率16%の村上氏側が提案した4人の取締役選任は僅差で敗れたが、今回は35%もの株を保有していることも勘案すれば、むしろ、うまく協調しながら成果をあげるように考えた方が良いのではないか。村上氏側は、特定の提案に対して、自分たちの主張のとおりにしろと言っている訳ではないし、また業界でもM&Aや株主還元などについては、どちらかというと村上氏の主張の方向で検討している企業も多い。

自分としては取締役として相当の時間と労力をここに割いても構わないと思っているし、現場の応援が出来れば良いと考えているので、『うまく使いこなす』くらいの度量を発揮してほしかったというのが正直なところだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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