ますます過熱 総合商社の資源獲得競争

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ますます過熱 総合商社の資源獲得競争

総合商社による資源投資の金額がますますその水準を上げている。

三菱商事は資源メジャーの英豪BHPビリトンとの合弁会社BMAを通じて、オーストラリアの原料炭権益「ニュー・サラジ」を買収する。BMAが投じるのは2520億円、うち三菱商事出資分は1260億円に上る。

豪州東部に位置するニュー・サラジは資源量6・9億トンと見積もられている。「探査作業を継続するので、資源量が増える可能性はある」(三菱商事)。生産開始時期などは未定だが、年産800万トン程度の見通し。稼働すれば現在年間5200万トンのBMAの生産量は大きく拡大する。

製鉄原料となる原料炭は世界的に需給が逼迫しており、2008年度の長期契約価格は前年度比3倍強となる1トン当たり約300ドル(強粘炭)に高騰した。原料炭の海上貿易量で世界最大手のBMAは、この値上がりによる恩恵を最大限享受。三菱商事への貢献は今期純益ベースで約2500億円に膨れ上がる。

三菱商事がBMAへの出資を15%から50%に引き上げたのは01年のこと。原料炭価格が40ドル台に低迷していた時期だったこともあって、追加出資額は約1000億円だった。今から考えると格安だったことがわかる。

もっとも、今回の投資は巨額ではあるが「よい買い物」(ゴールドマン・サックス証券投資調査部の吉田憲一郎氏)との評価が多い。「良質の原料炭は希少性がある。しかも、買収鉱区は既存のBMAの炭鉱に隣接しておりインフラを共用できるため開発コストは安くつく」(吉田氏)。

巨額投資が続々

近年、総合商社は資源ブームに乗り、最高益をたたき出してきた。ただ、保有資源量を維持・拡大するためには、拡張投資や新規権益の取得を続ける必要があり、各社とも躍起になっている。

今年4月以降に限っても、総合商社による資源関連投資は数多い。金額が張るのは4月に発表された丸紅による銅鉱山投資。権益取得で13億ドル強、今後の鉱山開発に6億ドルを同社は負担する。

それ以外にも、三井物産はブラジルの鉱山会社ヴァーレの増資を約750億円分引き受ける。三菱商事は新規開発が現状では認められていないオーストラリアのウラン権益を約5億ドルで取得。住友商事は南アフリカの鉄鉱石・マンガン・クロム資源会社に対する300億円の追加出資を決めている。双日と伊藤忠商事はオーストラリアのアルミナ事業の拡張投資に308億円を投じる(双日198億円、伊藤忠110億円)。さらに双日は同国での石油・ガス田権益を130億円で取得することも発表済みだ。このように100億円超の案件はゴロゴロしている。

ただ、世界的に獲得競争が激しい分、案件によってはリスクの高いものも見られる。つい最近、ある総合商社の経営会議に上がった原油権益の投資案件はプロジェクトの損益分岐点が1バレル=100ドルを超えていた。少し前までの検討案件は採算ラインが60~70ドル。結局、この投資は見送りになった。

この会社の幹部は「目先、原油価格の調整リスクは大きいが、この案件が稼働するのは早くて5年後。そこから15年間生産するとして、そのころ原油価格が100ドル以下になることは考えにくい。そう考えると投資すべきかもしれないが、現実に100ドル超の採算ラインを見せられると二の足を踏んでしまう」と悩ましい心境を打ち明ける。

各社の権益獲得意欲は依然として強い。ただ、高値づかみのリスクも高まっている。資源ブームに踊らされることなく、案件を見極めていく力がいよいよ試されている。

(山田雄大 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

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