遊園地や市場…「今はない施設名の駅」10選 首都圏には意外に多い?昔のままの駅名

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8)一本松駅<東武越生線・埼玉県鶴ヶ島市>

かつて存在した松の木が由来となった一本松駅(筆者撮影)

東武東上線の坂戸駅から分岐する越生線。坂戸駅を出て最初の駅が一本松駅である。似たような名前の駅は他にもありそうだが、この一本松駅は所在地が一本松だからではない。鶴ヶ島市内には一本松という地名は存在しないのである。

では、なぜ一本松かというと、駅から少し歩いたところに一本松交差点があり、そこには立派な一本の松が立っていたという。江戸時代、大名行列が行き来していた頃、旅人は、この松があまりにも見事だったので誰もが振り返り通り過ぎたとの言い伝えがある。それで「みかえりの松」と言われるようになり、やがて一本松と呼ばれるようになったので、それにちなんで一本松という駅名が付いたと言われている。残念ながら松は現存せず、駅名だけが残ったのだ。

9)高根公団駅<新京成電鉄・千葉県船橋市>

冒頭で紹介した東武線の松原団地駅と似たような由来の駅名だ。1961年、当時の日本住宅公団が造成した高根台団地の最寄り駅として誕生し、多くの通勤通学客が利用した。しかし、誕生から半世紀以上が経ち、建物の老朽化が進み、建て替えが行われる一方、住宅公団は組織替えにより独立行政法人都市再生機構(略称UR都市機構)となり、公団住宅という用語は死語となった。にもかかわらず、駅名は高根公団のまま存続している。

にぎわいの日はやってくるか?

10)市場前駅<ゆりかもめ・東京都江東区>

これまでは、過去に存在した施設にちなんだ駅名を紹介してきたが、最後に、これらとは逆にこれからできるであろう施設を先取りして設置された駅をひとつだけ取り上げよう。

2006年の開業時には周囲には何もなく利用者も限りなくゼロに近かった駅。それが、ゆりかもめの市場前駅だ。市場とは、移転問題で揺れに揺れている豊洲市場のことで、移転を当て込んで駅だけが先行して開業したのだ。

当初の予定どおり移転が実現すれば、市場前駅は活況を呈するようになるだろうが、その場合、現行の大江戸線築地市場駅は実態にそぐわない駅名となり、改名することになるか、あるいは、このリストの10番目として話題になるかもしれない。

以上見てきたように、駅名というのは、地域の名称としても定着していく場合が多い。したがって、移転するかもしれない施設を駅名にすると後々困ったことにもなりかねない。駅を新設する際には、じっくりと検討のうえ、慎重に決めてもらいたいものである。

野田 隆 日本旅行作家協会理事

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のだ たかし / Takashi Noda

1952年名古屋市生まれ。早稲田大学大学院修了(国際法)。都立高校に勤務のかたわら、ヨーロッパや日本の鉄道旅行を中心とした著作を発表、2010年に退職後は、フリーとして活動。日本旅行作家協会理事。おもな著書に『にっぽん鉄道100景』『テツはこんな旅をしている』『シニア鉄道旅のすすめ』(以上、平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)、『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』(光文社知恵の森文庫)、『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』(ポプラ新書)などがある。

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