グーグルがAndroidを2種類にした深いワケ 低価格モデルの開拓を重視し始めている

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グーグルのプラットフォームは、Androidを擁することで、非常に大きく拡大しました。アクティブなデバイスは20億台で、大半のスマートフォンがAndroidで動作していることを表しています。

そのため、グーグルがAndroidプラットフォームを発展させることは、世界中のスマートフォンが発展することと同義です。確かに先進国ではiPhone/iOSのシェアも大きいですが、ユーザー数で見れば、Androidの変化のほうがはるかに影響力が大きいのです。そのためフェイスブックも、社員にはAndroidデバイスの使用を推奨しています。もし普段使っていてAndroid向けのアプリにバグが見つかれば、その影響を受ける人数は20倍近くになるからです。

ただし、先進国市場では、前述のとおり、iPhoneが手強い存在です。ブランド、デバイスの洗練度、動作速度、バッテリー持続時間などは依然としてiPhoneが優れており、高付加価値のプラットフォームとして、アプリ開発者もユーザー数の少なさを度外視して、iPhone向けのアプリを開発しているのが現状です。

グーグルとしては、サムスン電子から中国メーカーへ、Androidのブランド価値の高いスマートフォンを展開していく中で、Androidプラットフォームを発展させ、iPhoneからプレミアムユーザーを取り込む戦略に出ています。

Android Oは、こうしたハイエンドスマートフォン向けの機能の充実や、問題点の改善を意識して作られている、という印象でした。動作速度、バッテリー持続時間、セキュリティという3つのスマートフォンの最重要課題の改善と、VRやGoogle Lens、Googleアシスタントといったより魅力的かつ便利な機能の充実を図っています。

Android Goの役割とは?

他方、「次の10億人」へとスマートフォンを普及させるための戦略的なソフトウエアが、Android Goです。

Android Goは、Android Oの軽量版としてリリースされ、100ドル以下、メモリ1GB以下の新興国向けエントリーモデルとなるスマートフォンでも快適に動作する環境を提供するためのOSとして、切り分けられました。

グーグルはこれまでも、同様の廉価版スマートフォン向けにAndroid Oneを用意し、端末メーカーと組んで、低価格モデルの開拓に努めてきました。日本でも格安SIMと組み合わせるスマートフォンの入門モデルとして、Android Oneを見かけるようになりました。

しかし、Android Oneのデバイスは昨今、高性能化のニーズを受けて、100ドル以下の軽量スマートフォンという枠組みから外れるようになってきてしまいました。そのため、グーグルは、端末メーカーとのパートナーシップを用いない、自由にデバイスを設計できるAndroid Goを用意したのです。

フェイスブックやSkype、YouTubeなどは、すでに軽量版(Lite版)のアプリを用意しており、性能の高くないスマートフォンと遅い回線速度の環境でも軽快に動作する環境をつくってきました。またグーグルやフェイスブックは、モバイルネット環境に乏しい地域に対して、気球や無人飛行機を使ったネット環境確保のプロジェクトに尽力しています。

Android Goは「これからスマートフォンが普及する地域」に対して、これまで以上に大きな影響を与えていくことになると考えられます。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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