ネット時代に、なぜ「読書」が大事なのか?

カリスマ編集者と経営学者、「読書」を語り尽くす(下)

論理的思考は「考える読書」で磨かれる

楠木:「ストーリーを組み立てるセンスを磨くためには、『読書』という非常に古典的な方法がとても役に立つ」。これが、僕の『戦略読書日記』のひとつのメッセージです。

この場合の読書は、フィクションでもノンフィクションでも漫画でもいい。電子書籍でもいいと思います。ただし、まとまって長々と書いてあるものの塊でなければいけない。雑誌やウェブの記事と本の違いは、単純に持っている「時間の量」です。ネットは、どんどん時間を捨てて効率化するという方向で発達してきています。これはこれで便利ですが、一辺倒だとセンスは磨かれない。

センスというのはその人に固有の論理の体系であり、その人の文脈の中で使える引き出しみたいなものだと思います。論理と言った瞬間、それは必ず時間を背負っている。論理にはまず「なぜ」があって、次に「こうだから」と理由があって、「そうなる」という結果がある。結果に対する原因の時間的な先行性がある以上、すべての論理は時間を持っている。その塊が本であって、ウェブや記事のような情報は時間的な奥行きがない。「今日の株価は」みたいなのは典型的な情報で時間がない。しかし、「なぜ?」と考える習慣ができれば論理になり、つねに時間が入ってきます。本は考える習慣がなくても、最初から論理が入りまくっているわけです。

昔は本しかありませんでしたが、これだけ情報が多様化している今は、あらためて本をじっくり読む価値を見直すといいでしょうね。論理的な思考を磨く道具としても、ネットの時代における本の重要性はむしろ高まっていると僕は思います。

佐渡島:本を読むという行為が思考を変えていくというのは、僕も同感です。ただし実際のところ、ビジネス書を読んでいる多くの人たちは、全然、変わっていないと思います。本を自分で消化できているかどうかの問題でしょうね。

楠木先生は「本の中に論理がある」とおっしゃいましたが、論理があってもその論理を理解できないかぎり、自分のものにはならないじゃないですか。その本を理解しているかを毎回検証するのはすごく難しい。わかっているかどうかは、自分自身もわかりきらないと思いますよ。本を読んだ後に、その本に対する自分の考えをはっきり位置づけていないせいもありますね。読書後、どれくらい好きか、どれくらい駄目だと思ったかを、「星が5つかひとつか」ではなく、もう少し細かく理解する作業をするだけで、本から得るものはまったく変わる気がしますね。

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