トヨタ「ハリアー」の好調が少し悩ましい理由 「C-HR」効果で恩恵を受けているのは一体誰だ

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この6月に現行ハリアーには安全装備の充実をはじめとする大幅な商品改良が施される。これまで設定がなかった排気量2000ccのターボエンジン搭載モデルが設定されるという事前情報もあり、現状よりも商品力は増す。C-HRとの相乗効果によって、ハリアーのさらなる売れ行き向上も期待されるところだ。

ハリアーはトヨペット店の専売車種

とはいえ、この点には悩ましさもある。それは「レクサス」を除くトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店というトヨタの国内販売4系列のうち、ハリアーがトヨペット店の専売車種ということだ。つまり、C-HR効果でハリアーの拡販効果にあずかれるのはトヨペット店に限られる。

C-HRは量販車種の「アクア」「プリウス」などと同じくレクサスを除く4系列すべてで販売している。たとえば2017年3月におけるC-HRの販売台数は1万3168台。単純には割り切れないが、これを4系列でもし均等に割ったら約3300台ずつとなる。一方のハリアーはトヨペット専売なのに7360台も売れている。

トヨペット以外のトヨタ系販売店にとっては、C-HRで呼び込んだお客がハリアーに関心を示した場合、トヨペットに流れてしまうことに悔しさを感じるケースもあるだろう。ただ、それだけならまだいい。これ以外にオールトヨタにとっての問題がある。それはC-HRの波及が競合他社のライバル車種にも及んでいることだ。つまり、クロスオーバーSUV全体が活性化している。

もし、ハリアーをトヨペット専売ではなく、トヨタ全系列の扱いにできるなら、他メーカーのライバルSUVにお客が流れるのを最小限に食い止めることができるが、それは現実的ではないだろう。ハリアーをオールトヨタで扱うことに、トヨペット店が大反対するのが目に見えるからだ。

現状のトヨペット店では、高収益で販売台数が期待できるのは高級ミニバンの「アルファード」とハリアーぐらいしかない。「プリウスがよく売れているでしょ」と言う声もあるが、4代目となる現行プリウスの販売はすでに失速ぎみ。もともとディーラーにとっては利幅が薄いクルマである。現行ハリアーがデビューした当時、トヨペット関係者から「ようやく儲かる車種が販売できる」と喜びのコメントを聞いた記憶をいまも覚えている。

トヨペット店が「ドル箱」のハリアー専売を手放すとも、トヨタ全体としてもそこまでの手を打つともなかなか考えにくい。言い換えれば、C-HRの登場によって活性化しているトヨタ系販売店において、トヨペット店の最もおいしい立場が当面続くことになりそうだ。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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