筆者も、2%インフレ実現が未だに実現していないことは批判の対象になりうるし、日銀がその理由をしっかり説明することは重要だと考えている。執行部の任期満了まであと1年弱残っているので黒田日銀の政策を総括するのは早いにしても、早期に2%インフレが実現しなかったことを正しく分析することは、今後の金融政策運営をより健全にするために必要になるだろう。
2%インフレが実現しなかったことについては、さまざまな見解がある。一つあげれば「金融緩和を行ってもそれはインフレ上昇をもたらさない」、という見方があり、それは「金融緩和政策が限界に達している」などの主張にも通じる。それに同意する一部の市場関係者は、「金融緩和を強化しても効果がないから、早期に金融緩和を終わらせるべき」、との主張を述べている(筆者は、論理が飛躍していると考えるが)。
日銀の金融緩和は不十分だった
こうした金融緩和批判は、日本の野党などが唱えるアベノミクス批判とかなり似ているわけだが、妥当なのだろうか。筆者はそう考えない。
2%インフレが実現しなかったことを踏まえれば、黒田総裁が大胆に金融緩和を強化したが、実際には「不十分な金融緩和しか行われなかった」というのが理論的な帰結になる。そう考える筆者にとって、2%インフレ実現を目標としている日銀が、早期に金融緩和を収束させるという選択肢はありえないだろう。最近は、日本の経済メディアを中心に、日銀による出口政策が多く取りあげられているが、焦点がずれているとしか思えない。
繰り返しになるが、2%インフレを実現させるには、黒田日銀は、(後知恵であるが)より大胆な金融緩和政策を行う必要があった。さまざまな選択肢はあるだろうが、例えば国債などの資産購入をもっと大規模にかつ機動的に行うことが妥当だったということだ。
実際には、2014年4月の消費増税後の景気失速、2014年末からの原油価格下落がダブルパンチとなり、上昇していた消費者物価を押し下げ、また浮上していたインフレ期待を低下させた。インフレ期待の低下に対して日銀の金融緩和がしっかり行われなかったから、インフレ率2%目標が実現できなかった、というのが筆者の認識である。
もちろん、当時の原油価格の急落を予想するのは難しかったし、日銀にとって不運だった。一方、2014年4月の消費増税については予定されていたことであり、それが経済・インフレ率に及ぼす負の影響度を見誤ったとの批判は免れないだろう。
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