「ラルフローレン」が米旗艦店を閉店した事情 アパレル界の優等生に何があったのか
今、ニューヨークの街中は本当にアスレジャーだらけである。男女ともスポーツウエアに身を包み、足元は申し合わせたように最新のスニーカーを合わせている。ファッショントレンドというよりは、もはや世代を問わない完全なマスのファッションとして定着してきているのだ。一度スポーツウエアの機能性と快適性に慣れてしまうと、もうジーンズのごわごわした履き心地や、ジャケットの構築的なフォルムは、前時代的なものに感じてしまうのだろう。
アメリカの若者ファッションのマスがアスレジャーなら、コアなファッション好きは「ラグジュアリーストリート」を嗜好している。カニエ・ウェストらのヒップホップアーティストや、フィアオブゴッドらの新興ファッションブランドなどが牽引し、世界中のファッショニスタの間で国を超えて流行しているスタイルである。
「中途半端」な価格帯が足かせに
1990年代のラルフローレンは、1993年に立ち上げた「ポロ スポーツ」で、勃興期のヒップホップシーンから高い支持を受け、黒人のヒップホップ系アーティストはこぞってラルフローレンを愛用した。しかし、当時以上にファッション業界においてラッパーの影響力が増す中、ラルフローレンを身に着けるラッパーはほとんどいないのが現状である。
つまりラルフローレンは、新しい中価格帯の大衆向けトレンド、アスレジャーと、新たなトレンドであるラグジュアリーストリートに乗り遅れた結果、ブランドとしての“鮮度”を失いつつあるのだ。
2つ目の苦戦の理由は、2000年代後半に急速に存在感を増したファストファッションの影響である。
格安価格で最新のトレンドを提案するH&M、トップショップなどのファストファッション、長く着られる定番商品を安価に提案するユニクロなどの躍進は、消費者の服の価格に対する概念を変えてしまった。直接的なライバルではないが、ブランドとしては比較的買いやすい価格帯だったラルフローレンは、この10年の間に大きな値上げをしていないにもかかわらず、相対的に高く見えてしまうようになってしまったのである。いまや消費者に求められているのは下か上で、中間的な価格帯のブランドは、業界を問わず苦戦を強いられているのだ。
もちろんラルフローレンは、この流れをただ黙って見ていたわけではない。2004年にスタートした「ラグビー」は、メンズとレディースのヤング市場(10代半ば〜20代前半)をターゲットとした廉価ラインだったが、2013年に終了。2011年に登場した若い世代向けのカジュアルライン「デニム アンド サプライ」も、2016年に終了した。双方ともに、価格に対して高い価値を備えていたが、価格面ではファストファッションとは勝負にならなかったのだ。
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