日揮が異色の「復職」社長に再建を託すワケ 会社を一度退職、今年2月に復帰したばかり

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そんな石塚氏が折れたのは、長年連れ添った妻の一言だった。「43年間もお世話になった会社に助けてと言われているのだから、最後の恩返しをしたら」。実は12月から、佐藤会長や先代会長の竹内敬介現相談役が2人がかりで自宅を訪れ、石塚夫人の説得工作に入っていた。12月末には石塚氏も“陥落”。今年2月にカムバックとなった。

石塚氏は会社に復帰すると早速社内の聞き取りに精を出した。1、2週間で「何かがおかしい」と異変を感じたという。

石塚氏に言わせれば、会社やプロジェクトをじっくり分析してもわからない人もいれば、さっと見ただけでわかる人もいる。「自慢じゃないが自分は後者だ」。社内には能力のある人材は豊富で、プロジェクトの遂行能力も落ちていない。ただ、石塚氏の目に入ってきたのは、問題の発見が遅い、問題が発生したときの対応スピードも遅いという、日揮の危機だった。石塚氏はそれを「タガが緩んでいる」と評する。

日揮のコア事業に忍び寄る危機

まさに時が人を選ぶの言葉どおり。日揮の現状が、石塚氏という異端の人物を求めた。

日揮はLNGプラント工事の世界的な大手。写真は2015年に完成したインドネシアのLNGプラント(写真:日揮)

日揮は2017年3月期に2度にわたって下方修正を余儀なくされ、220億円の最終赤字に転落した。最終赤字は実に19年ぶり。同社の事業の中心はLNG(液化天然ガス)関連工事だが、LNGはここ数年供給過剰が続き、大型工事が相次いで先送りされている。それを埋めるべくLNG以外の案件に取り組み、インフラ分野の受注拡大という成果があった一方で、そこに落とし穴もあった。

中でも米国とクウェートでの大型工事が痛手となった。米国での石油化学プロジェクトでは、異常な降雨と洪水で2017年2月を予定していた工事の完成が半年近く遅れる見込み。工事手順の入れ替えを余儀なくされ、人件費が想定外に膨らんだ。

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