日揮が異色の「復職」社長に再建を託すワケ 会社を一度退職、今年2月に復帰したばかり
同社はプロジェクトの設計から部材調達、建設まで請け負う「EPC事業」を柱とする。米国など海外では建設費を固定価格で契約し、それ以上の費用は日揮側が負担するケースが多い。米国の案件では、工事の遅延に伴い300億円強の追加費用の計上を余儀なくされた。
天候要因では致し方ない側面はある。ただ、JV(共同企業体)を組む米大手建設会社が進める工事に問題は起きていないか。異変を早期に発見し、何かしらの対策は打てなかったのか。建設まで取り組む以上、もっと“嗅覚”を磨かないといけない。社内の「タガが緩んでいる」という石塚氏の危機意識と重なる問題である。
クウェートでの石油精製プロジェクトも、構図はまったく同じだ。建設工事に必要なインド、パキスタンからの労働者の発給ビザの遅れから工事が遅延。これをメインに国内不採算工事と合わせて、200億円強の営業利益の下押し要因となったもようだ。
「棚卸しをすれば、業績は戻せる」
2度にわたる失態。その中で佐藤会長は「土下座に近い形で」石塚氏を社内に戻し、次期社長に指名した。石塚氏には長年EPC事業の現場に入り込み、役員として事業を統括した経験がある。今の日揮の危機を救える人物は、石塚氏を除いていない。佐藤会長はそう判断したのだろう。
石塚氏は1990年代、タイの製油所工事を29カ月という「世界記録の超短納期で完成させ」(同氏)、業界に名を轟かせた。2013年に起き、日揮社員10人を含め合計17人の尊い人命が失われたアルジェリア人質事件では、責任者として直属の部下らの遺体を引き取る経験をし、その後の日揮のセキュリティ体制の構築にも奔走した。
「それに強面(こわもて)でしょ。今はこれが必要なんですよ」と佐藤会長。“LNG不況”をしのぎつつ、傷ついた日揮の収益基盤を立て直すことはできるのか。「これだけの人材がそろっている。ちょっと棚卸しをすれば、業績を戻す自信がある」(石塚氏)。その手腕に、同じく不況に苦しむエンジニアリング業界のライバル社も熱い視線を注いでいる。
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