「家系」はもともと「吉村家とその系列店で修業したお店の総称」だったはずである。少なくともラーメンファンの中ではそう語られてきた。「大勝軒」「二郎」のような屋号とはまた違うが、「博多豚骨ラーメン」のような「ジャンル」とも違うという認識だった。
「家系ラーメン」は「ジャンル」になってしまった
それが「横浜の豚骨しょうゆラーメン」という定義にいつの間にか変わっていた。そう、いつの日か「家系ラーメン」は「ジャンル」になってしまったのである。

前出の山路氏はこう漏らす。
「お客さんがそのラーメンを『家系』と呼ぶのはいいとしても、古い家系ラーメン好きからすると、吉村家の流れとはまったくつながらない店が、自ら家系を名乗るのにはやはり違和感を覚えますね。やはり家系という言葉はジャンルにふさわしくないように思うのです。今後はこの流れはさらに加速し、資本系中心になっていくと思います。今の若い世代は『家系』は知っているが資本系にしか行ったことがない人が大半なのでは? こういった現象は他を探してもなかなかないですね」(山路氏)
「家系」本来の魅力はやはり豚の背ガラをつねに炊き続けることによってできるフレッシュなスープだ。つねに炊き続けているので午前中と夜でも味や濃度が違う。それを味わえるのが家系ファンの楽しみだった。

「吉村家」は現在、横浜駅近くで「家系総本山 吉村家」として連日大行列を作っている。濃厚な豚骨スープに濃いめのしょうゆダレを合わせ、上に鶏油を浮かべる。麺は酒井製麺の平打ち麺。具はチャーシュー、ホウレンソウ、ノリ3枚、ネギがお決まりとなっている。麺の硬さ、味の濃さ、脂の量を好き好きにカスタマイズでき、ラーメン酢、ショウガ、ニンニク、トウバンジャンなどでアレンジできるのも特徴だ。
高田馬場で横浜家系ラーメン店「千代作」(2014年閉店。六角家→かまくら家→千代作の系譜)を開いていた千代正純さんはこう語る。

「資本系のお店で家系ラーメンを食べて満足した人たちは、資本系以外の家系ラーメンのお店に行くことで新たな発見ができる可能性が残されています。ただ、もしもそうでなくて不満足だった人たちは、家系ラーメンを誤解する可能性があります。
個人店が厳しくなるのは当然の流れだと思います。これからの時代、独立をして家系ラーメンを始めて多少繁盛したとしても、家を建てることはおそらく無理だし、時間的にも金銭的にも子どもを育てる余裕はできないというのが現実です。私もお店を始めた頃は、自分が年を取るってことをいっさい考えなかったものです。個人店の課題は大きいですね」(千代氏)
「資本系」を否定はしないが、家系ファンからすると、本来の流れをくむ「家系ラーメン」を知らないのはあまりにもったいない気もする。
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