岩瀬:ただ、最近、西川潔さん(ネットエイジ社長)とか、小澤隆生さん(Yjキャピタル株式会社取締役COO)、川田尚吾さん(ディーエヌエー創業者のひとり)とか第1世代がそういう役割を果たしていると思います。
伊佐山:まさにそのとおり! だから、後は“数”の問題だと思う。日本だと全員の名前を把握できる程度しかいません。シリコンバレーだと、そこかしこにプロデューサーがいる。個人の印象だと、100倍どころか、1000倍近くはいると思います。アメリカ人だって起業するのに相当のリスクを負うんです。はたから見ると、アメリカ人と日本人は性格が違うからとか言われるけど、そういう問題ではない。プロデューサーやエンジェルなど支援してくれる人が数多くいるからできる。
岩瀬:伊佐山さんは「1000倍」と言っていましたけど、僕からすると厚みが「1万倍」くらい違うような気がしていますね。シリコンバレーには、同じような企業が100社くらいあって、その中で考えもしないような企業が“わっさわさ”出てきているようなイメージがあります。
伊佐山:そうかもしれない。シリコンバレーの起業家は、そうした中で勝ち抜かないといけないから、本当にいろいろなあの手この手を使って、いかに「生き残るか」を必死で考えて、行動している。日本はそう考えると、まだぬるい。
とんでもなく”チャンス”がある日本
岩瀬:日本のベンチャーシーンについて、「ベンチャーファイナンス、おカネが足りないからダメだ」という議論があります。ただ僕は、そうではない気がしているのですが、いかがですか。
伊佐山:個人的な感覚だと、日本は「とんでもなくおカネがあるな」と。ただ、おカネはあるけど、プロデューサーがいないから、絶対値で見るとベンチャーにおカネが回っていないだけ。だから、岩瀬さんとか、気の利いた経営者を見ると、実際におカネを集めている。(編集部注:ライフネット生命は準備会社設立時、1年半で132億円を集めた)
アメリカで100億円以上を集めるのは、すごい大変で、ほとんどの人は集められない。日本は、起業家への教育やプロデューサーがいないから、巨大な金脈があるのに、アクセスできていないだけ。現象だけでみると、「日本はベンチャーにおカネが回らないから海外で戦えない」という意見が出る。これは一面的には「正しい」けれど、間違っているのは「しっかりした戦略を持てば、投資してくれる人はたくさんいる」ということに気づいていないことだと思います。
特に、日本の場合は、事業会社が圧倒的に強いので、VC業界だけ見たら小さい市場だけど、事業会社を含めると結構な市場となる。たとえば、大企業の中で研究開発費上位10社の1%を外部投資に回すだけで、500億円近くになる。この1%がベンチャーに流れれば大きい。
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