「外資のネスレ」がここ日本で躍進できる理由 ネスカフェアンバサダーがいかに「型破り」か

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ネスレ日本では、日本で高齢化や少子化が進む一方で、プレミアムなチョコレートの市場が盛り上がっている点に目をつけたそうです。その市場に、あえて低価格帯のチョコレートであるキットカットのプレミアムラインを投入することで、高価格帯チョコレートという新しい市場に参入するだけでなく、キットカットブランド全体の活性化に成功しているわけです。

「キットカット ショコラトリー」の取り組みが価値を上げています(写真はネスレ日本提供)

何しろ、これらのさまざまな取り組みを実施したことで、日本におけるキットカットの売り上げが、ついに本家イギリスでの売り上げを超えてしまったというからすごい話です。

ここで改めて強調しておきたいのは、このキットカット ショコラトリーの取り組みが、ネスレのグローバルでの取り組みではなく、ネスレ日本独自の日本での取り組みという点です。

外資系企業であるはずのネスレ日本の方々が、日本市場の変化に真剣に向き合い、日本の顧客の声に耳を澄ませ、日本人のチョコレートに対する嗜好の変化に気づけたからこそ、世界でも初めてのキットカットのプレミアムライン開発というチャレンジに成功することができているわけです。

「ネスカフェ アンバサダー」も日本独自の取り組み

ネスレ日本におけるこうした成功事例はキットカットだけではありません。たとえば、ネスレ日本では、日本市場の高齢化や少子化に対応するために、従来のたくさんのコーヒーを一度に作るという飲料スタイルではなく、1人1杯からでもコーヒーをおいしく作れるネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ、ネスカフェ ドルチェ グストというコーヒーマシンを開発する、という取り組みに挑戦されています。

この取り組みもまた、世界に先行して高齢化や少子化が進んでいる日本市場のニーズを先取りした成功事例といえるでしょう。

さらに、日本ならではの取り組みとして象徴的なのは、やはり「ネスカフェ アンバサダー」でしょう。

ネスカフェ アンバサダーはすでに約30万人の申込者がいるというアンバサダープログラムの代表的な成功事例です。筆者が初めてネスレの方にお話をお聞きして驚いたのは、実はこのネスカフェ アンバサダーもネスレ日本がはじめた日本独自の取り組みということです。

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