国民には疑問だらけ、安倍首相の「改憲」提起

自民党内で真剣な議論ができない状態も露呈

つまり憲法改正が現実のものとなって国会で審議がスタートすると国民投票が終わるまで短く見積もっても半年以上の間、日本社会は憲法改正をめぐって国会、マスコミ、言論界、そしてさまざまな団体など社会全体が賛否両派に分断され激しく対立することになるであろう。この間、政府も政党もほぼすべてのエネルギーをこの問題に集中投下することになる。経済、財政、社会保障問題などの重要課題には事実上、手が付けられない状況になってしまう。

今の日本にはたしてそんな余裕があるのだろうか。そう考えると、圧倒的多数の賛成が前提とならないかぎり憲法改正がいかに非現実的であるかがわかる。安倍首相はそこまで考えたうえで改正を提起したのだろうか。

自民党から「大きな政治」は消えた

それにしても自民党はどうしたのであろうか。かつての自民党であれば、憲法改正問題など党の路線にかかわる重要な問題に直面すると、党内で数多くの会議が開かれ、ハト派とタカ派が激しく議論を戦わせていた。だからといって党が分裂するわけではなく、双方が適度に妥協・譲歩し合意を形成してきた。それが長年政権を維持してきた自民党の経験知であった。

ところが現在の自民党はどうか。次期総裁を目指しているといわれる石破茂元幹事長や岸田文雄外相ら一部の議員が否定的な見解を表明しているものの、かつてのような活発な動きは見られない。当の会議を開いても異論はほとんど出てこない。多くの議員が安倍1強を容認し、次の選挙での当選を優先して執行部に異論を挟むことを避け続けている。多くの議員が国政に真剣に取り組むのではなく、目先の自己利益しか追求しなくなっているのである。

安倍首相の憲法改正提起は、自民党から大きな政治が消えてしまい、「小さな政治」が跋扈(ばっこ)していることを、あらためて国民に知らしめるという副産物も生み出した。

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