暗くて狭い「鉄道高架下」が人気化する必然 人と街をつなぐ「ハブ」が続々誕生

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この流れをくんでいるのが、2014年に11月完成した「コミュニティステーション東小金井」である。

中央線では、2010年の三鷹―立川間の約13.1kmにあった18カ所の踏切を除去するために行われた高架化によって、9kmにわたる、7万㎡もの土地が生まれた。これだけの土地が駅近くに新たに生み出されることは他路線を含めて考えても、そうそうあることではない。では、どう使うか。大きな柱となったのは、地域の人を巻き込むというやり方だ。

同高架下プロジェクトに携わるリライトの籾山真人氏がこのとき立てた戦略は、「ホストとゲストの関係を変える」というものだ。

「百貨店などのリアル店舗の売り上げが減っている一方で、通販が同程度増えており、市場規模の合計はここ二十数年変わっていないはず。モノが売れないというより、買い方が変わった。どこででも買えるモノは便利な場所、やり方で買い、どうしても欲しいモノはわざわざ買いに行く。だとしたら、わざわざ買いに行く必要を作ってあげればいい」

こうして、2012年12月から毎月、地域マガジン『ののわ』を発行。これを通じて、地域を巻き込もうと考えた。ののわは、どこにこんな店があるなどといった地域情報を伝えるだけではない。地域をつなぐ活動をしている人を冊子で紹介したり、トークイベントを開いたりすることで、そこに来た人たちが活動の味方になってくれることをもくろんだ。地域の人たちに地元のネタを取材してもらう地域ライターという仕組みを作ったことで、新たな人間関係も生まれたという。

入居者を想定して収支計画を作成

こうして、コミュニティステーション東小金井がオープン。商業施設を開発する際は、収支計画を立ててから、というのが一般的だが、ここではまず、人とのつながりを作り、そこから入居する人を想定。入居者に魅力的な賃料を収支から逆算し、そこから建築可能な施設ボリュームを検討したという。

「コミュニティステーション東小金井」のテナント(筆者撮影)

コミュニティステーション東小金井は、新宿―立川間の中央線沿線では西国分寺駅に次いで2番目に乗降客数の少ない東小金井駅から徒歩3分。約100mの細長い敷地の約半分ほどに鉄骨造のコンテナが置かれ、そこが店舗となっている。残りの敷地のうち、建物前の通路にはテーブルなどが置かれ、内と外があいまいな空間になっている。敷地をフルに使っていないのは家賃を上げないためであると同時に、ほかの用途に使える余地を残すという意味もある。

ここに入居するのは、この地域で毎月初めに開かれている朝市に出店していたうちの5組。革小物作家、ペット雑貨のセレクトショップ、地元野菜を使った料理を出す飲食店などで、店舗兼工房になっている店もある。いずれもここにしかない店だ。当然、地域にそれぞれの人脈を持つ人たちでもあり、店舗運営にはそれが生かされている。

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