暗くて狭い「鉄道高架下」が人気化する必然 人と街をつなぐ「ハブ」が続々誕生
それは、中目黒がもともと路面店文化の街である認識からだ。スノッブなカフェもあれば、庶民的な居酒屋もあり、洗練と猥雑(わいざつ)さが入り交じる雑多さが中目黒の魅力。それを大事にして施設を作ると考えると、優先すべきは施設の統一感ではなく、さまざまな路面店が街に溶け込んでいる中目黒らしい風景ではないか、と考えたという。
建物上部に共通する黒い庇(ひさし)など、いくらか統一されている部分もあるが、それ以外はバラバラ。それをまとまりがないと評する人もいるが、かつて高架下にあった、闇市由来の居酒屋の雰囲気を上手に再現した店舗に人が集まっていることを考えると、この街らしさを尊重した作りは成功していると言っていいのではなかろうか。
中目黒の高架は古く、耐震補強などを繰り返しているため、狭く、鉄道施設もあって、使用できない場所もある。それを逆手に取り、意識して作られた人と親密になれる空間。誕生間もないため、リピーターの多い施設になるかどうかはまだこれからだろうが、人に会いに行く飲食店という発想に従来と違う楽しさを感じる人は少なくないはずだ。
高架下の使い方が変わったワケ
こうした「ハブ型」高架下のはしりと言えるのが、2010年にJR東日本都市開発が秋葉原と御徒町の間の高架下を利用した2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマル アキ・オカ アルチザン)だろう。この高架下が従来の高架下と大きく違う点は3つある。
ひとつは、モノ作りをする零細、中小企業が多く入居しており、多くの商業施設で見るようなチェーン店がほとんどないという点。一般に大規模商業施設は、失敗を恐れるためか、ある程度の売り上げが見込める大手を入れたがるが、そのつまらない感じがないのだ。
2つ目は店舗、敷地内を利用してワークショップ、イベントなどが開かれており、人が集まるようになっている点だ。モノを買うだけのために立ち寄るのと、人と一緒に作業をするのでは共有する時間の長さは大きく異なり、そこで生まれる人間関係にも差が生じる。そして3点目は秋葉原、御徒町という2つの、従来行き来する人が少なかったところの中間点となることが意図されているということ。つまり、秋葉原と御徒町という2つの街のハブとなることを意識して作られたわけである。
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