暗くて狭い「鉄道高架下」が人気化する必然 人と街をつなぐ「ハブ」が続々誕生
それが目に見えるのは半年に1度開かれる「家族の文化祭」だ。入居しているテナントが中心となって開くこのイベントには、地元を中心に30店舗ほどが出店。音楽イベントなども開かれる。
開業から2年。文化祭の来客数は当初の1000人から5000人ほどに増えた。施設側が費用や人員を出して施設を切り盛りするのではなく、テナントが主体性を持って集客し、売る。つまり、それだけ人を集める力があって、個性のあるテナントがいるというのがこの施設の大きな強みだろう。
寂しかった地域が徐々に活性化
街の個性を前面に出し、新しい活動を始めている高架下は関西にもある。
阪急線の春日道駅―王子公園駅間である。三ノ宮駅界隈だと入居するテナントもいる高架下も、少し離れるとほとんど使われず荒廃していた。2013年にそれを活用しようと阪急電鉄に提案したのが、神戸R不動産の西村周治氏だった。当初は阪急電鉄に外装費用を頼もうと考えていたが、結局、外装、内装ともテナント側に任せることにした。
が、これが逆によかった。初期に入居したのはDIY(日曜大工)ができる人が多かったため、コストをかけずに整備が進み、かつそれぞれが異なる空間になったのだ。「オーナーが統一して整備すると初期投資に費用がかかり、安く貸せなくなってしまう。ここは更地の状態で貸しているので、賃料が安くなっている。天井高は高く7.5m近いところもあり、音を気にせず、自由に使える。それが受け、当初30軒ほどの空きがあったのが、半分埋まりました」(西村氏)。
現在のところ、残りの半分は現在耐震改修中などで貸し止めとなっている状態だが、それが終わり、空いている高架下が埋まれば、街が大きく変わる可能性もある。すでに人通りのない、暗かった高架下に人の流れが生まれ、年に2回くらい行っているイベント時には100人以上の人が集まり、満員御礼になる工房もあるという。
ガラス張りで中が見える工房も多く、作られたモノを買うだけでなく、職人とやり取りしながら、欲しいモノをオーダーすることもできる、新しい工場街が生まれつつある。
このほかにも、期間限定のイベントパークや、保育園、公共施設、野菜栽培など高架下利用は百花繚乱で、ハコとしての多様性が話題となっている。制約の多い場所をどう使うか、それぞれ知恵を絞っているわけだが、それ以上に大事なのは、地域にとってどのような意味を持つ空間にするかを考えることだ。高架下に生まれる新たな「ハブ」が、沿線の価値維持、向上に寄与するかもしれないのである。
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