岡田准一が敬服する「降旗&木村」の深い魅力 高倉健作品手掛けた名コンビが「追憶」で復活

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そんな二人の関係性を岡田は「熱い(木村)大作さんと、静で仏の降旗さん。職人が行きつく先というのはこのどちらかなんだろうなと思います」と評している。

降旗・木村の現場は「テスト1回、本番1回」というシンプルな撮影スタイルを貫いている。高倉健という俳優は、一発勝負の本番に全精力を傾けてくるタイプの俳優であり、スタッフはその一瞬を捉えるために万全の準備を期してきたからだ。このデジタル全盛の時代に、彼らはフィルムでの撮影にこだわっている。

そんな現場を体験した岡田は「今みたいに何テイクも撮るというよりも、刀で切りあうような感じで、一発で終わるような美しさがありました。ですから終わるのは早いんですけど、撮影が終わった後にサウナに入って、ご飯を食べたりしながら、役のことを考える時間がすごく長いんです。その考える時間が役に生かされるような現場でした」と振り返る。

「岡田准一を健さんに重ね合わせている」

「現場にいられるだけでしあわせだなと思えた」と語る小栗旬(左) (c)2017映画「追憶」製作委員会

降旗監督は、『高倉健メモリーズ』(キネマ旬報社)に掲載されたインタビューで「僕にとって健さんは永遠のアイドルです。そして映画界に入って、初めて目くばせで意思が通じ合えた人ですから」と語っている。一方の木村も「(高倉)健さんというのは、ジッとそこに立っているだけで観ている人を納得させるすごみがあった」と語るなど、2人にとって高倉健への思いは人一倍強い。

そんな二人が、『追憶』主演の岡田准一を高倉健に重ね合わせているという。

「斜め後ろからの姿ですね。背は健さんの方が高いけど、一人の人間の姿としては、同じような人生を背負って生きているような感じが、斜め後ろからの姿に共通しているんじゃないかなと思います」(降旗監督)、「健さんってのは、基本的には受けて立つ俳優だった。まわりにしゃべらせて、黙って感じさせる。健さんの後ろ姿に人生すべてを感じます。カメラをのぞいていると、ナンボでももちます。そういうことを岡田さんに感じてるということかな」(木村)

今回、若手の俳優たちとタッグを組み、「若い人たちから元気をいただきました。あと1~2本は撮れるかなと思っています」と語る降旗監督。岡田や小栗を筆頭とした若手俳優たちも、いかにこの現場が特別なものであるかを肌で感じ、食事の際は高倉健に関する質問を二人にぶつけるなど、貪欲に吸収しようという姿勢が見られたという。高倉健の魂は確実に次世代に受け継がれているようだ。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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