プレミアムフライデーで休日格差が広がる? 完全週休2日制を採用していない企業も多い

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大企業の場合は増え続けている内部留保(企業の利益の蓄積分)を賃金に回すことを検討すべきである。法人企業統計(財務省公表)によれば、2015年度の労働分配率(企業の利益のうち労働者の取り分)は67.5%で、1990年度の67.6%以来の低水準になっている。3年連続で付加価値が伸びたのに賃金はほとんど増えなかったため、労働分配率は70%を割り込んで低下を続けた。その一方で、2015年度の企業の内部留保は377兆円で4年連続で過去最高を更新している。

将来、労働力不足が懸念されていることを考えると、内部留保を増やす政策だけではなく、優秀な人材を確保し、より長く働ける環境を構築する政策も重要だろう。また、中小企業や零細企業に対しては、政府が賃上げに対するインセンティブを提供するか、助成金を有効に活用するなどの支援をするのが望ましい。

企業規模による休日の格差は大きい

最後に、プレミアムフライデーの実施が「休日の格差」を広げる要因になってはならない。企業規模や産業の間には賃金格差のみならず休日の格差も存在している。

厚生労働省の「就労条件総合調査」(2016年)によると、2015年時点で「完全週休2日制」を採用している企業の割合は、従業員1000人以上が69.1%で最も高く、次は300~999人(60.0%)、100~299人(49.6%)、30~99人(47.2%)の順である。産業別には、金融業・保険業が90.7%で最も高いのに対し、運輸業・郵便業は25.1%で最も低い。

さらに、労働者1人平均年間休日総数も従業員1000人以上の規模の企業では118.3日なのに対し、従業員30~99人の規模では108日と少ない。産業別には、情報通信業が122.2日で最も多く、宿泊業・飲食サービス業が101.9日で最も少ないという結果となっている。

このようなデータを参照すると、現在、日本で実施されているプレミアムフライデーは、一部の企業や産業、地域、つまり大企業など福利厚生がより充実した企業、そして都心に位置した企業を中心に実施される可能性が高く、「休日の格差」はさらに広がるおそれがある。

実際に調査会社インテージが今年の2月24〜27日に首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)で実施した調査結果によると、企業規模別のプレミアムフライデーの実施率は、従業員1000人以上の企業が5.8%なのに対し、従業員100人未満の企業は2.4%にとどまっていた。

政府は、プレミアムフライデーが「休みの格差」を広げないように、働き方改革のうえではより慎重に議論して対策を実施するべきである。プレミアムフライデーの実施が新しい格差の拡大につながらないことを強く望むところである。

金 明中 ニッセイ基礎研究所 主任研究員

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きむ みょんじゅん / Myoung-Jung Kim

1970年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、亜細亜大学創造学部特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)。

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