5月7日のフランス大統領選挙の決選投票の勝者はエマニュエル・マクロン前経済・産業・デジタル相だった。現地時間23時30分(日本時間6時30分)、開票率83%の段階でマクロン氏の得票率は64.2%。5月3日のテレビ討論を手堅く乗り切ったマクロン氏が逃げ切った。
親EU(欧州連合)、新自由主義的な政策を掲げた中道のマクロン氏の選出は世界経済や市場にとって朗報だ。EUの分裂、保護主義傾斜のリスクは後退した。しかし、今回の大統領選挙をもって、フランスと欧州の政治リスクが一気に解消する訳ではない。
マクロン新大統領を待ち受ける数々の難題
今回のフランス大統領選挙で、極右のルペン候補とともに急進左派のメランション候補が票を伸ばした背景には、テロの脅威、成長と雇用の伸び悩み、国内での格差、そして終わらない財政緊縮への不満がある。しばしばこれらの問題と結び付けられて、不満の矛先となるのが移民だ。
フランスの失業率は直近(2017年3月)でも10.1%。ユーロ圏平均の9.5%を上回り、世界金融危機前のボトムの水準(2008年2~3月:7.2%)よりも遙かに高い水準で下げ渋っている。フランスは、主要先進国の中で出生率が最も高く、人口動態の面では、より高い成長を実現できる国だ。しかし、雇用に関わる規制の厳しさと税負担の重さから、雇用の創出力が弱く、高失業と低成長に甘んじている。
国内の格差への不満も広がる。今回の大統領選挙では、マクロン氏の支持者とルペン氏の支持者は地域や職業、学歴、年齢層などによって分かれた。ルペン氏の支持者は、EUの統合の深化と拡大やグローバル化、さらにIT化の進展を脅威とみなし、繁栄から取り残された地域に住む。マクロン新大統領は、こうした人々や地域を成長に取り込まなければならない。
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