にもかかわらず、北朝鮮は挑発行為をやめようとしない。4月29日朝には、弾道ミサイル発射を強行した。それは失敗に終わったようだが、折しも28日には米国が主宰する国連安保理の閣僚級会合が開かれ、北朝鮮制裁強化について協議が行われた矢先だった。
トランプ大統領はツイッターで、「尊敬する習近平国家主席の意向を踏みにじるものであり、最悪だ!」と北朝鮮を非難した。
貿易面での「100日計画」をセット
そんな北朝鮮の挑発、暴走を中国は本気で抑え込もうとしているのだろうか。あるいはその意志が本当にあるのだろうか。
トランプ氏は為替操作国の認定を取り下げて、手のひら返しで習氏をベタ褒めしたものの、中国を動かすというテコの効果を見極めるまで、「不均衡貿易是正のための100日計画」という条件をつけている。いわば、「手のひら返し」はしたものの、「手放し」ではないという「手の内」を見せている。
そこにはトランプ氏の交渉戦術家としての面目がある。交渉相手に何かをさせるという契約の中で、最も複雑で、難しい契約のことをウォール街では「パーソナル契約」と呼んでいる。国と国との関係に、トランプ氏と習氏という人的要素が加わる。
トランプ氏も習氏も、似たような中華思想の持主であり、極めて自分中心主義的だ。そのパーソナルな関係がうまくいく確率は少ない。習氏はトランプ氏が期待するほど北朝鮮に対して圧力をかけないかもしれない。だから、貿易面での「100日計画」をセットとして留保しておく。これは習氏にとってはかなり厳しい条件になるはずだ。
アメリカの狙いはあくまでも北朝鮮の核開発をやめさせることだ。少なくとも核実験の停止ないし凍結をさせたい。中国としても金正恩労働党委員長率いる北朝鮮の核武装には手を焼いており、厄介な存在になっていることは確かだ。
中国がその気になれば、北朝鮮に壊滅的な打撃を与えることはいとも簡単だ。貿易や石油供給を制限し、金融や観光などを締め上げれば済む。中国としては、そんな過酷な手段は最後のカードとして残しておくだろう。
28日の国連安保理の閣僚級会合でも、中国の王毅外相は北朝鮮の強硬姿勢が改まらないのは、北への圧力を行使しない中国に原因があるとする国際社会の見方を否定してみせた。あくまでも対話による平和的解決を求める構えだ。
北朝鮮の体制が崩壊し、朝鮮半島全体がアメリカの安全保障の傘の下に入ることなど、中国にとっては、絶対に受け入れられない。中国にとって北朝鮮は“緩衝国家”としての存在価値が大きいからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら