ちなみに不用意な失言をするのは政治家だけではありません。民間企業でも頻繁に発せられています。たとえば、不祥事の渦中で「自分だって寝ていないのだよ」と発言し、火に油を注いでしまった食品メーカー社長の失言を記憶している人も多いのではないでしょうか? これは睡眠不足からの不用意な失言。最近では「放射能の影響で(体が)大きくなった」と発言して激しくたたかれた住宅設備業界の社長もいました。発言後に謝罪をしましたが後の祭り。ネット上で発言が炎上することになりました。
経営トップ以外でも、不用意な失言をしてキツイ報いを受ける人もいます。不用意な失言で要職から滑り落ちた役員、同僚の信頼を失い転職を余儀なくされた社員など、報いを受けた人をたくさん取材したことがあります。ちなみにLINE Qが「人間関係を壊した、後悔している失言ある?」と質問したアンケートでは約8割の人が後悔したことがあるとのこと。
失言自体は誰もがしでかすことといえるのかもしれません。実際、筆者が取材していても相当数いると感じます。そこで今回の記事では、失言を極力しないように回避法をみなさんと考えてみたいと思います。
正直すぎる不用意な発言
不用意な失言で大きな痛手を被った人たちを取材していくと、1つの原因が見えてきました。それは正直すぎる発言です。自分は悪くない、間違っていない、言うべきと判断して発言したにもかかわらず、思いがけず失言となってしまうケースです。たとえば、取材した中堅システム会社のエンジニア(Sさん)は取引先からの問い合わせで
「社内には何人くらいエンジニアがいるのですか?」
と聞かれたので、(正直に)人材が枯渇していて、すぐに動ける要員はいないこと、外部に再委託しているという内情を説明。ところが同僚の営業担当は実情を伏せて「エンジニアは十分な確保しています」と伝えていたので、食い違いのある発言となりました。するとその取引先が不安を感じて、別のシステム会社と並行して発注することを決断。その連絡が(Sさんの説明から)数週間後にあり、年間で億単位の売り上げ損失を招く事態となりました。
当然ながら営業担当は激怒。Sさんを「あなたの失言は許されるものではない」と批判。社内の立場が相当に悪くなりました。本当のことを言っただけなのに……と言いたい気持ちもありながら、自分が引き起こした事態であることは事実なため、口をつぐむしかない状況になってしまいました。
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