トランプ支持者はオバマをなぜ「憎悪する」か

ネットの「オバマ陰謀論」を本気で信じている

これは自由至上主義のリバタリアンが、政府の方針に疑問を投げかけるというような、健全な民主主義のプロセスとは異なり、社会制度そのものに対する根強い不信感によるものだ。しかも、この不信感は、社会のなかでだんだんと勢いづいている。

夜のニュース番組は信用できない。政治家も信用できない。よい人生への入り口であるはずの大学も、私たちの不利になるように仕組まれている。仕事はない。何も信じられず、社会に貢献することもできない。

社会心理学者は、集団で共有された信念が、一人ひとりの行動に大きな影響を与えることを明らかにしている。一生懸命働いて目標を達成することが、自分たちの利益になるという考えが集団内で共有されている場合、集団内の一人ひとりの作業効率は、ほかの条件はまったく同じで各自がバラバラに働いたときよりも高くなる。理由は簡単だ。努力が実を結ぶとわかっていれば頑張れるが、やってもいい結果に結びつかないと思っていれば、誰もやらない。

また同様に、何かに失敗したときにも、同じようなことが起こる。失敗の責任を自分以外の人に押し付けるようになるのだ。

敗者であるのは、自分ではなく政府のせいだ

私はミドルタウンのバーで会った古い知り合いから、早起きするのがつらいから、最近仕事を辞めたと聞かされたことがある。その後、彼がフェイスブックに「オバマエコノミー」への不満と、自分の人生へのその影響について投稿したのを目にした。

オバマエコノミーが多くの人に影響を与えたことは否定しないが、彼がそのなかに含まれないことは明らかだ。いまの状態は、彼自身の行動の結果である。生活を向上させたいのなら、よい選択をするしかない。だが、よい選択をするためには、自分自身に厳しい批判の目を向けざるをえない環境に身を置く必要がある。白人の労働者階層には、自分たちの問題を政府や社会のせいにする傾向が強く、しかもそれは日増しに強まっている。

現代の保守主義者(私もそのひとりだ)たちは、保守主義者のなかで最大の割合を占める層が抱える問題点に対処できていない、という現実がここにはある。

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保守主義者たちの言動は、社会への参加を促すのではなく、ある種の疎外感をあおる。結果として、ミドルタウンの多くの住民から、やる気を奪っているのである。

私は、一部の友人が社会的な成功を収める一方で、ミドルタウンの黒い誘惑につかまり、早すぎる結婚、薬物依存症、投獄といった、最悪の状態に陥る友人もたくさん見てきた。将来の成功や失敗は、「自分自身の未来をどのように思い描いているか」にかかっている。ところが、「敗者であることは、自分の責任ではなく、政府のせいだ」という考え方が広まりつつあるのだ。

たとえば私の父は、懸命に働くことの価値を決して否定するような人ではなかったが、それでも、生活を向上させるはっきりとした道のいくつかを、信用していなかった。私がイェール大学のロースクールに進学すると知ったとき、父は私に、「黒人かリベラルのふりをしたのか」と言ったものだった。白人労働者の将来に対する期待値は、これほどまでに低いのである。こうした態度が広まっていることを考えれば、生活をよくするために働こうという人が少なくなっても、なんら不思議ではない。

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