トランプ支持者はオバマをなぜ「憎悪する」か ネットの「オバマ陰謀論」を本気で信じている

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オバマの存在は、私が育ったミドルタウンの住民の心の奥底にある不安を刺激した。オバマはよい父親だが、私たちは違う。オバマはスーツを着て仕事をするが、私たちが着るのはオーバーオールだ(それも、運よく仕事にありつけたとしての話だ)。オバマの妻は、子どもたちに与えてはいけない食べ物について、注意を呼びかける。彼女の主張は間違っていない。正しいと知っているからなおのこと、私たちは彼女を嫌うのだ。

白人の労働者階層に広がる、このような怒りや冷笑癖(シニシズム)については、誤解に基づくものだと多くの人に批判されている。確かに、一部の陰謀主義者や過激な人たちが、オバマの信仰や先祖などについて、ありとあらゆる方法で、無意味なことを書き立てているだけなのだ。

そして、まともな報道機関はすべて、あの辛口で知られるFOXニュースも含めて、オバマにはアメリカの市民権があり、正常な宗教観の持ち主であると絶えず伝えている。私の地元の知り合いたちも、主要なメディアがオバマについてどのような報道をしているかはよく知っている。

白人労働者は「まっとう」なニュースなど信じない

しかし、彼らはそれを信じないのである。そもそも、アメリカの有権者のうち、メディアが「とても信頼できる」と考えているのは、全体の6%にすぎない。多くの国民は、アメリカ民主主義の砦であるはずの報道の自由を、たわごとにすぎないと考えている。

報道機関はほとんど信用されておらず、インターネットの世界を席巻する陰謀論については何のチェックも働かない。「オバマは私たちの国を破壊しようとしている海外からの侵略者だ」「メディアの報道はうそばかり」「白人労働者の多くは、アメリカに関する最悪のシナリオを信じている」……。

以下に、私が友人や親類から受け取ったメールの一部を公開しよう。

・9・11同時多発テロ事件から10年目に、テロに関する〝未解決の疑問〟がテーマのドキュメンタリー番組が制作された。ラジオ番組のホスト役を務め、右翼として知られるアレックス・ジョーンズはその番組のなかで、あの惨劇の裏にはアメリカ政府の関与があったことを示唆した。
・オバマが推進する医療保険制度改革「オバマケア」の下では、患者の体内にマイクロチップを埋め込むことを強制しているという内容のチェーンメールが出回った。この話には宗教的な含みがあるため、波紋はさらに広がった。聖書には、終末が訪れたときに「獣の刻印」が背教の証しとして使われると記されている。多くの人が、この獣の刻印は、実は電子デバイスなのではないかと考えていた。実際、複数の友人が、ソーシャルメディアを使ってオバマケアへの注意を呼びかけた。
・ニュースサイト「ワールド・ネット・デイリー」に、ニュータウンで起きた銃乱射事件は、世論を銃規制の方向に誘導するために、政府が引き起こしたものだという趣旨の社説が掲載された。
・複数のウェブサイトに、オバマがまもなく戒厳令を発動し、3期連続での在任を可能にするだろうとの情報が載った。

 

同じような話は、ほかにもいくらでもある。実際にどれだけの人が、こういう話を信じているかはわからない。ただ、私たちのコミュニティの3分の1の人が、明確な証拠があるにもかかわらず、前大統領の出自を疑っているとするならば、ほかの陰謀説も、思ったより浸透している可能性が高いだろう。

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