欧州に暗雲、少子高齢化で年金破綻も 出生率低下など難問山積
深刻な出生率の低下
欧州の多くの国では、外国人労働者がいなかった場合に人口を維持する上で必要な合計特殊出生率(TFR)2.1を大きく下回っている。ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアのTFRは1990―2011年に30%以上低下した。2011年のハンガリーのTFRは1.2、ポーランドとルーマニアは1.3と、人口統計学者が危険とみなす水準にある。
ドイツでは過去1年で、国内の労働人口が7万人減少。アレクサンドロビッチ氏は、同国の昨年の雇用の伸びは外国人労働者に流入によるものであり、経済成長見通しは暗いと指摘。経済協力開発機構(OECD)の試算によれば、現在1.5%であるドイツの潜在成長率は、高齢化により2020年後は1%を下回る水準に低下する。
一方、ドイツに比べると明るい人口構成を持つフランスと英国は2050年までに、経済規模でドイツを上回る見通しとなっている。
減り続ける労働者で多くの年金受給者を支えなくてはならないという世代間対立は将来的なリスクとなるが、すでにドイツ経済の一部には影響が及んでいる。
スタンダード・ライフ(英エディンバラ)のエコノミスト、ダグラス・ロバーツ氏によると、高齢化が一因となって同国の自動車販売は減少しており、自動車産業全体の設備過剰に拍車をかけている。同氏は「年金状況の変化同様、自動車のような主要産業の再編は難しく、組合と政府から大きな抵抗にあうだろう」と指摘する。
欧州全体で見れば、労働人口の縮小は、米デトロイト市の財政破綻で明らかになったように将来の年金運用を困難にさせるだけでなく、特に景気後退以降に蓄積された公的・民間債務の返済を難しくさせるだろう。
欧州委員会の推計によると、欧州の雇用者数は2010―2030年に500万人(2.5%)減少する。また、スペイン銀行(中央銀行)は昨年、富裕国は2012―2021年の10年間で年間経済成長率が1%ポイント以上低下するとの見通しを示した。
欧州がこうした問題に対して立ち上がり、社会保障制度をうまく機能させることはできるだろうか。
ロンドンのコンサルティング会社ロンバード・ストリート・リサーチのリー・スキーン氏は「高齢化に伴う支出と労働力の低成長もしくはマイナス成長が重れば、政府や金融セクターの改革を行わない限り、先進国の大半は破綻への道を突き進むことになる」と分析している。
(原文執筆:Alan Wheatley記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)
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