「働き方改革」のズレまくりな議論にモノ申す 誰のために何のためにやっているのか

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働き方改革もゆとり教育と同じ轍を踏んでしまう可能性を感じます

おおたとしまさ(以下、おおた):教育ジャーナリストのおおたとしまさです。育児や教育を専門にしています。私は大きな批判を浴びたゆとり教育と、働き方改革に共通点を見いだしています。

ゆとり教育はいまや「脱ゆとり」の方向性が鮮明になっているように、「失敗」として扱われています。しかし、ゆとり教育のもともとの趣旨は「目先の点数を追うのではなく、可視化できない生きる力を伸ばしていこう」というものだったはずです。

新しい取り組みを行えば、トレードオフがあるのは当たり前で、副作用もあります。目先の点数を追わないのであれば、目先の点数は下がってしまいますよね。

それでも、20年後、30年後の社会に伸びしろの大きい大人たちがたくさんいるような社会を目指して、ゆとり教育の導入を決めたわけです。ですが、社会の中でそのコンセンサスが十分に取れていなかったため、学力の国際比較調査PISAの点数が落ちた途端、「ヤバい!」と方向転換することになってしまいました。

私からみると、働き方改革もゆとり教育と同じ轍を踏んでしまう可能性を感じます。長時間労働是正に反対する人は誰もいません。でも、長時間労働をやめたら、業績は一時的に落ちる可能性が高い。副作用が出たときに「GDPが落ちたじゃないか、やはり長時間労働が必要だ」と、揺り戻しが起こってしまうかもしれない。それは、同一労働同一賃金でも同様で、何かを取り入れると弊害は必ず起きます。

ネガティブな部分のコンセンサスも取らないと、ゆとり教育と同じ状況に陥ってしまうのではないか。それが、僕の懸念です。ネガティブな部分に勇気をもって向き合うことが、改革の歩を進める一歩になるのではないでしょうか。

10年経って変わったこと

10年経っても非正規の人がいまだにいます

赤木智弘(以下、赤木):フリーライターの赤木智弘です。私は自分自身がフリーターとして、いわゆる1990年代後半から2000年代前半に社会に出た就職氷河期の「ロスジェネ世代」、その中でも非正規雇用に甘んじるしかない人たちを追ってきました。この10年でなにが変わったのか。明確に変わったのは、10年という時間が過ぎたことです。なんの冗談で言っているわけでもなく、10年過ぎたということは、10年、歳を取ったということです。当時31歳だった僕は41歳になった。僕もそうだから、当然周りの人もそうです。

つまり、なにが言いたいのか。当時、就職氷河期に社会に出た人は30代だったのが、40代になった。仕事をして普通にまっとうな人として生きていくことを考えたときに、本来は30歳前後でロスタイムに入っていたはずです。でも、そこからさらに10年が過ぎてしまった。

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