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キャリア・教育 #「若き老害」常見陽平が行く サラリーマン今さら解体新書

「働き方改革」のズレまくりな議論にモノ申す 誰のために何のためにやっているのか

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  • 常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家
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一方で変わってないのは何か? すべてです。すべてが変わっていないから、10年経っても非正規の人がいまだにいる。彼らを今から仕事によって救うことは不可能です。職歴のない彼らがいくところは、土木や介護の現場です。土木は昔ながら低所得者の人が多く、介護も高齢者が増えていく中で人手不足になっています。

では、介護の現場に、僕らのように苦労させられてきた人たちが入ると何が起こるのか。おじいちゃんやおばあちゃんが「俺たちの若い頃は何もなくて、ただ仕事を一生懸命やってきた。お前らみたいな若い頃に恵まれてきた人たちが……」と愚痴を言うわけですよ。彼らにとっては、軽口かもしれませんが、僕たちからするとふざけるなという話です。

今、日本は「人手不足」といわれています。しかし、就職氷河期世代は無視されている。企業が欲しがっているのは、これからの新卒学生です。われわれ就職氷河期の世代は、後ろから横取りされたような感覚でいる。

「働き方改革」が進んでいますが、率直なところ「これって何?」という印象です。残業規制はあくまで正社員の話でしょう。フリーターが自分の生活のために、ダブルワーク、トリプルワークをやっているようなとき、残業規制の話は出てこない。 まったく関係がないわけです。8時間、16時間働こうが、フリーターだとそれは残業でもなんでもない。

「ワーク・ライフ・バランス」や、「多様な働き方」というのであれば、正社員じゃなければ生活できない現状を考えていかなければいけない。そのためにはどうした支援が必要なのか、自分の生活をどう成り立たせていくのかが議論されていない。だから、今回の働き方改革について、僕には意味があるとは思えません。

常見:「世の中から『非正規』という言葉をなくす」と安倍首相は言っていますが、「非正規」という言葉がなくなったとしても、働き方はなくなりません。働き方改革実現会議も大手企業の正社員を中心とした話ばかりです。日本の多くを占める中小企業や、日本的雇用の外にいる非正規、あるいはフリーランスの方に対する配慮が今まで足りない現状がありました。

問題の根本には「お客様は神様だ」思想

広告業界の問題の根っこには「お客様は神様だ」という思想があります

中川淳一郎(以下、中川): ネットニュース編集者の中川淳一郎です。元博報堂の社員でした。広告業界の問題の根っこには「お客様は神様だ」思想があります。最近、とあるファミリーレストランが注文をしないで勉強ばかりをしている学生に対して、実際は丁寧な文面でしたが、趣旨としては「勉強をやめろ、ほかのお客さんが入れない」と書面で注意をしたのですが、「俺たちは客だ」と学生は反発したようです。店にとって彼らは「迷惑なお客」なわけで追い出す権利があるのに、「お客様は神様」という思想のもとに彼らを受け入れないといけない。

広告代理店の仕事も似ていると思います。電通で女性社員の過労自死事件がありましたが、残業時間による過労や、モラハラ以前に、目の前のクライアントからの怒りのメールや電話が怖い。夕方の6時になっていきなり「修正してください」と連絡がくる。

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【デジタルの問題点】

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