移動宅配ボックスで荷物が一人でやってくる ヤマトの「ロボネコ」で物流危機は解決するか

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荷物を受け取る利用者のメリットは大きい。10分刻みで時間と場所を指定できるので、今ある時間帯指定(2時間が主体)と比べ、時間コストの大きな削減になるからだ。特にネット通販では、リアル店舗よりも時間を削減できる点が最大の目的。荷物を送る場合も同じである。

これを社会的な側面からみると、移動宅配ボックスは、物流におけるAI(人工知能)活用といえる。物流分野では製造業などと異なり、AIの活用がまだほとんど進んでいない。宅配便事業で最も負荷がかかるのは、各戸までのラスト・ワン・マイルであり、その部分でイノベーションが実現すれば、生産性の劇的な向上につながる。もちろん、既存の宅配がなくなるわけではないが、ドライバーの労働条件の改善や、ひいては業界全体の働き方改革にも結び付くだろう。

宅配便の場合、ある段階までは、装置産業にたとえることができる。大型ターミナルなどを建設して取扱能力を拡大し、単価を下げても取扱個数を増やせば、荷物1個当たりの固定費が逓減するという理屈だ。それでも、ラスト・ワン・マイルの手前で荷物が滞留する現況には、単純な機械化では対応できない。

人手不足が社会問題化する中、ドライバーに対して、これまでのように長時間労働を恒常的に課すことはできない。取扱総量の抑制や指定時間帯の一部見直し、当日配送からの撤退、料金値上げなど、注目を集めている昨今の一連の動きは、ヤマトをはじめ、宅配便事業の抱えてきた矛盾が一気に表面化した結果である。

人口が密集、配送密度の濃いエリアが有効

2015年度における宅配便のシェアは、1位・ヤマト(46.7%)、2位・佐川急便(32.3%)、3位・日本郵便(13.8%)の3社で、92.8%を占めている(国土交通省調べ)。すでに寡占状態といえる。

移動宅配ボックスは人口が集中していて配送密度の濃いエリアでこそ有効だ。取扱数量の多寡によって、導入できるエリアに差が生じる結果、各社の特徴はより鮮明になってくるだろう。CtoC、BtoC(主にネット通販)の得意なヤマトは、最も広域で導入が可能であり、費用対効果が高い。それに対して、BtoBの小さな荷物を得意とする佐川急便、ポスト投函で完了するメール便が得意な日本郵便が、どこまで本気で取り組むことができるか、これから注目される。

はたしてヤマトによるロボネコの試みが成功するかどうか。宅配クライシスの解決は、移動宅配ボックスの実用化が大きなカギを握っている、といえそうだ。

森田 富士夫 物流ジャーナリスト

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もりた・ふじお / Fujio Morita

1949年生まれ。物流業界を専門に長年取材・執筆を行う。主な著書に『トラック運送企業の働き方改革〜人材と原資確保へのヒント〜』(白桃書房)。

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