亀田製菓が「柿の種198円」にこだわる理由 158円からの値上げで売れ行き落ちたが…

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営業部隊の意識も変わった。佐藤社長が「売り上げより利益」という方針を示しただけでなく、営業支店長の評価基準も変更したためだ。以前は売り上げが大半を占めていたが、営業利益の占める割合を7割程度まで高めた。その結果、以前は「販売促進費をつぎ込んで値下げをしてでも売り上げを伸ばそうとしていた」(営業担当だった元社員)が、採算重視になり、無理に売り上げを追うことがなくなったという。

一連の変化で、2016年9月末時点で柿の種ブランドの営業利益は前年同期に比べ約5%改善した。

売れ行きに響いても、198円は変えない

だが、値上げによって売り上げの伸びにブレーキがかかった。「以前の安い価格に慣れていた消費者が離れてしまったようだ」(鈴木氏)。3月、亀田製菓は2016年度業績予想の下方修正を発表。従来予想比で売上高を3%、営業利益を6.7%引き下げた。柿の種の失速が、売上高の8割を占める国内米菓事業の足を引っ張った。

それでも亀田製菓は"柿の種198円"にこだわり続ける。「店頭価格にブランドの価値は連動する」(鈴木氏)という考えのもと、値下げによるブランド価値の低下や採算悪化を避ける狙いだ。

挽回を期すべく、塩分を30%カットした「減塩 亀田の柿の種」や、チョコ味やチーズ味の柿の種が入った「亀田の柿の種 トレイルミックス」など、派生品を次々と投入。2017年1~3月の亀田の柿の種ブランド合計の売り上げは、金額ベースでようやく前年同期の水準を上回るようになってきた。

とはいえ、派生品の積極投入は従来品の顧客を奪うリスクがある。定番化せずに終売となれば改廃コストもかさむ。亀田製菓は利益ある成長を続けられるか。本家本元である「亀田の柿の種」の復活に懸かっている。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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