新人を育てたいなら「文章」を書かせてみよう 昔ながらの教育法がいちばんの近道だった

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このように「More(課題)とGood(良い点)」を複眼的にとらえることは、副次的な効果がありました。新人だけでなく、先輩の側のリーダー育成にも、上司の管理職としての育成にも役立っていったのです。

この企業は、結果的に業界平均より高かった離職率(入社3年で離職する率)を、逆に5%も下げることに成功しました。人事部担当者は、「コミュニケーションの質が上がった」と話しています。

2つ目は、ある中堅の商社での事例です。

この会社は、昔から文章力を養成することに注力していました。取った方法は、読書感想文を書かせることでした。しかし、課題図書を読まない、読んでも“あとがき”を写したような感想文しか書けない、そんな状態が続いていました。1カ月もすると、新人の60%以上がこの課題から脱落していました。

結果、この新人教育の方法をやめてしまおうか……と思っていたところでした。やめる前に、人事部が新人にヒアリングしてみました。なぜ読まないのか? 書かないのか? すると、「やっても意味がない」「なんのためにやっているのかわからない」という声が上がってきました。

なるほど、読書をすること、感想文を書く意味が共有できていないのか、と。でも人事部から意味や目的、効果を伝えても、押し付けととらえられて、理解されない。どうしたものかと思案した揚げ句、彼らの大事にしている価値観に解決のキーワードがありました。

それは「仲間観」でした。書いた読書感想文を、新人同士が共有・発表する時間を月に2回設けるようにしました。

新人同士で感想や意見を発表し共有する、そのために読書感想文を書いてもらう、という形にしたのです。集まるから、読んでこないとついていけない。同期同士の意見の交換なので、会社や上から目線の押し付けではないから参加しやすい。そんなことが効果を発揮したようです。本を読む率が上がり、意見をより活発に交わすようになりました。この共有の場を通じて、文章を読む、書く、そして話すことも鍛えられる場となっていました。

ポイントは、上司や会社のための読書感想文ではなく、新人という仲間同士で集まるときの共通話題にしたことです。この結果、会社は「読書から仕事に役立てなさい」とは一言も言っていないにもかかわらず、読書の結果を自分の課題に置き換えて取り組むまでになったそうです。

結果的に、この新人グループは、なんと100人の新人が1年後誰も辞めずに継続して勤務しているそうです。さらに、各職場での会議においても、発言率が高くなったという報告も聞いています。

お客様への「お礼の手紙」

3つ目に紹介する事例は、ある飲食店チェーンでの例です。

全国に展開している飲食店なので、集まって教育するためには、時間やコストがかかることが昔からネックでした。

そこで採った方法は、やはり文章を書くことでした。それも集合せずに、各現場でできる機会を作ることでした。それは、来店したお客様への「お礼の手紙」でした。

・店舗の会員ポイントカードに加入してくれたお客様
・宴会などを予約していただいたお客様
・残念ながらクレームとなってしまったお客様
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