柴又の葛飾区職員寮が「寅さんホテル」に変身 1泊4000円から!不要な官舎は稼ぐ施設に
野尻:また以前からある障害者の作業所は、40年来スリッパを作り続けているわけですが、これを外部の人と組んで、めちゃめちゃイケている「渋谷土産」を作ることにしました。
シルバー層が活躍できる場としては、食堂を考えました。東京にはレストランがたくさんあるので、ここは「今日は、松田さんちのレシピ」という感じで、家庭の味を楽しんでもらう場所にしようというコンセプトです。朝食やお昼の弁当向けにおにぎりを80円くらいで販売したり、ランチやディナーにはその日、厨房に入ってくれている方の家庭の料理を出してもらう。夜も9時で閉店すればいい。
収支については、耐震補強や内装や設備に5億円ほどかかることがわかりましたが、10年借り受けることができれば6年で回収できる見通しが立った。経済的価値も生むことができるし、地域の課題も解決できる。こんないいことはないと、渋谷区と一緒に日本郵政にこのプランを提案しました。
木下:で、結果はどうでした?
野尻:この先は、ちょっと言えないです……。
木下:そうなんですね。あははは(苦笑)。
「官舎 → マンション」型の開発は、もう不要
松田:国家公務員宿舎について、それをどう利用するかを最終的に判断するのは財務省理財局ですが、彼らは「売ってしまったほうがプラスだ」と思えばそうしてしまいます。そのほうが楽ですしね。
売却された官舎の多くは、デベロッパーが買ってマンションにしています。現在、都心の新築マンションが供給過多になりつつある一因にもなっています。この状態が続くと住宅政策上も大変なことになるので、野尻さんが提案するような活用法に舵を切るべきだと思いますね。
野尻:マンションはもういらないですよね。
松田:でも売れるんですね。デベロッパーの人たちもこんな商売ができるのは今のうちだけだとわかっているから、ガンガンやっちゃっている。ただ野尻さんの先ほどの活用方法を聞いていて、これは新しく造る官舎にも転用できるかなと思いました。
そういえば、埼玉県朝霞市に建設される予定だった国家公務員宿舎が、「東日本大震災から復興しようとしている時期になぜだ」という反対にあってストップした(2009年、その後二転三転して最終的には中止)ことを覚えている人も多いと思いますが、実はいま造られている超都心の“官舎”もあるんです。
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