性暴力、刑法改正案に欠けた「重大な視点」 必死に抵抗しないとレイプと認められない

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望月弁護士は司法の限界を実感しているという。

「弁護士の仕事は加害者の弁護がメイン。国家権力によって身柄を拘束されている加害者の人権を守るため、いかに示談に持ち込むかなど刑罰を軽くすることに重点をおきがち。被害者視点で意識を見直す必要がある」(望月弁護士)

民事裁判で受けたセカンドレイプ

「被害者の声を届けたい」。『A-live connect』で代表を務める卜沢彩子さん

被害者の苦痛、苦悩は大きい。

若者の居場所づくりなどに取り組むプロジェクト『A-live connect』で代表を務める卜沢彩子さん(29)は大学2年のときにレイプ未遂にあった。忌まわしい記憶は何度もフラッシュバックして甦り、加害者を訴えた民事裁判で“セカンドレイプ”を受けた。

「男女約20~30人の飲み会の帰り道、コートを着ようとした私のバッグを持ってくれた男が“飲み直そうよ”と、しつこく豹変したんです」

断っても聞き入れてもらえず、男はバッグを持ったままタクシーに乗り込んだ。“強引な人だな”と不愉快に思いながら、バッグを取り返すために同乗した。着いた先は男の自宅だった。

「無理やり自宅に引きずり込まれ、玄関先で抱きつかれてキスされました。抵抗して何度も“やめてください”と言ったけれど、男は動じる様子もなく、下着に手を入れてきました。私が生理中であることに気づくと“そんなにイヤならしかたがないね”と未遂に終わりました」(卜沢さん)

警察には被害を届け出なかった。証拠がないと思ったからだ。精神のバランスと体調を崩し、1か月後に自殺未遂を図った。その後も犯行シーンを思い出すたび、トイレに駆け込んで声を押し殺して叫んだ。数年後、加害者の男を相手取って民事訴訟を起こした。

「裁判では想像もしなかったことで責められました。なぜ、タクシー運転手に助けを求めなかったのか。なぜ、事件翌日にブログを更新しているのか、と。平常心を装っていただけです。加害者側の弁護士は私の男性関係の質問をしたり、私が言葉に詰まるとすぐ“記録して”と言ったり。ショックで傷つきました」(卜沢さん)

控訴審を含めて約2年かかった裁判は完全敗訴。弁護士費用約100万円は自腹を切った。加害者が怒鳴ってはいないこと、あからさまな暴力をふるっていないことから、暴行・脅迫要件を満たしていないと判断されたという。

「刑法改正案は厳罰化に踏み切りました。でも、加害者の罪が罪と認められなければ、いくら厳しくしても意味がありませんよね。正直言って、手ぬるい改正だと思います」(卜沢さん)

都内の会社員・早乙女京香さん(30=仮名)は9~10歳のころ当時、高校生だった兄から性虐待を受けた。

「私にとって男性は“物”になり、身体を求めるなら応えてあげるかと見下すような考え方を持ってしまった。性的な逸脱が強くなって、お金で愛人関係を結んだり、8股をかけたこともありました。兄とのことは一生、胸に秘めておこうと思っていました。たびたび、“あのとき、イヤとはっきり言えばよかった”などと自分を責めることがありました」(早乙女さん)

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