性暴力、刑法改正案に欠けた「重大な視点」 必死に抵抗しないとレイプと認められない
性犯罪被害者を支援する4団体でつくる『刑法性犯罪変えよう!プロジェクト』は改正案に一定の評価をしながら、内容が不十分として署名活動を展開中だ。改正案で評価できる点はどこか。
父親から受けた性虐待
性暴力被害者をサポートするNPO法人『しあわせなみだ』の理事長・中野宏美さんは、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪化については評価している。
「加害者が示談交渉に持ち込むことを防ぐことができますから。刑事弁護を得意とする一部の弁護士は反対しています。示談は醍醐味らしく、ホームページで盛んに宣伝しています」(中野さん)
ほかにも、男性被害者を対象に入れた点や、親などがその影響力に乗じて18歳未満の子どもにわいせつなことをすると暴行・脅迫要件がなくても罰する点は、おおむね評価されている。
前出の山本さんは13歳のときに父親から性虐待を受けた。両親が離婚するまで7年間続き、思春期は“男の人はけだもの”と恐怖の対象でしかなかった。こうしたケースは、改正案では縛りをかけることができる。
私たちの意識改革も必要になってきそうだ。
女性が自分らしく生きられる社会の実現を目指す『ちゃぶ台返し女子アクション』の代表・鎌田華乃子さんは「内閣府の調査で6・5%の女性が望まない性行為の経験があることがわかっています」として次のように話す。
「例えばパートナーからセックスを迫られたとき、複数の選択肢があってどれを選んでも安全でなければいけない。“うん”と言わざるをえない状況下で同意はありません」
山本さんらの活動に賛同する西東京市の納田さおり市議(無所属)は「きちんと性教育しないといけない。性の話題を恥ずかしがったり、避けようとする傾向を改めることが大切です」と話す。
専門家は刑法改正案のどこが問題だと考えるのか。
長崎総合科学大学の柴田守准教授(刑事法)は公訴時効が守られたことを批判する。
「現行法の強姦罪で10年、強制わいせつで7年の時効が撤廃されていない。幼少期に被害に遭った場合、被害を認識したり、加害者を訴えるのに時間がかかることがある。成長する途上で時効を迎えてしまうんです」(柴田准教授)
裁判で、被告人以外の性遍歴や経歴を証拠として提出させることを制限する「レイプ・シールド法」についても議論が足りないと指摘する。
「例えば、性風俗で働く女性が強姦され、裁判になったとき、加害者側が被害者の仕事や過去の男性遍歴を証拠として尋問することを防ぐルールがない。セカンドレイプになってしまうんです」(同)
性犯罪被害者が被害者として扱われてこなかったといえる司法の現状をどこまで改善できるか。
被害者救済や加害者更生と併せて大きな問題だ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら