ヤマトに連想される「儲からない物流」の真実 「荷物が増えるほど利益率悪化」の事実はない

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ただ、それでも5.2%の利益は出ている。デリバリー事業に限っても、セグメント利益は3.9%ほど出ているのだ。

テレビの報道などでは、ヤマトに限らず現場の困窮を伝え、ドライバーにインタビューしてみせる。そして荷物を走って運ぶ姿を映す。物流といっても、企業間の物流もあれば、ヤマトのように消費者へのラストワンマイルを担う場合もある。

確かに戸口に配達する宅配は儲かっていないか、少なくとも利幅が減少している。とはいえ、さまざまなバリエーションのある物流が総じて「儲からないものだ」といつの間にか“認定”されてしまっている。ドライバーの姿が多くのひとの頭から離れないため、「利益なき物流業界」の姿を検証されることはない。

物流は儲からないか営業利益率を確認してみる

きっかけは、私がテレビを見ていたときのことだった。某物流業の中小企業経営者がインタビューで現場の大変さを語っていた。気になって私がその企業の経営状況を調べると、その企業の利益はなんと増えていた。もちろん、多忙な結果で儲かるのは何も悪くない。しかし、その番組は、ヤマトの利益減少を説明した流れで、そのインタビューが差し込まれていたため、ほとんどの視聴者は儲からない企業例として見たに違いない。

先日、財務省の法人企業統計で2016年10~12月期の各社経営状況が明らかになった。そこで、資本金規模を問わず、陸運業全規模の営業利益率を見てみよう。2010年~2016年にかけて5~7%台で推移している。

これはだいぶ通常のイメージとは乖離しているのではないだろうか。「陸運業が儲かっている」と指すからだ。

本業の儲けを指す営業利益率を採用したが、2010年から見てみると、上昇傾向にあるのだ。陸運業だから、輸送機関トラックなどの貨車輸送を指す。

これを、資本金規模を1億円以上と再指定してみよう。

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