「精神科医の禅僧」が教える、心を休める方法 知ると役に立つ「4つのR」
私がかつて治療させていただいた女性の患者さんで、ひと月に時間外だけで200時間以上働くという、尋常ではない過重労働を強いられる中、うつ状態になってしまった方がいます。もちろん主治医として診断書を作成し、幸いにも職場の理解が得られたことで残業停止の措置が取られました。しかしそれから半年が経過しても心の回復は思わしくなく、結果、退職という形になりました。
会社勤務時代を振り返った彼女は「休み方がわかりませんでした」と言いました。そう、忙しい日々に追われているだけでなく、たとえ時間を得ても休息にあてることができないという方が急増しているのです。
心と体の両面を休息させる方法
人間が本当の回復を得るためには、心と体の両面を休息させることが必要不可欠です。ここでは「4つのR」でその方法を解説いたします。
(1)リラクゼーション(Relaxation)
心をリラックスさせることが休息になることは容易に想像がつきますが、ただ脱力して過ごすだけでは本当の休息は得られません。
人間の内臓はほとんどすべてが自律神経(交感神経と副交感神経)でコントロールされていますが、心をリラックスさせれば、このうち副交感神経を優位にすることで体の休息にもつながります。そのためには五感のすべてを用いて副交感神経への刺激を誘導することが大切です。
たとえば、以下があげられます。
・鎮静系のアロマやお香を焚いて香りを楽しむ(嗅覚)
・自然音や穏やかな音楽を聴く(聴覚)
・スイーツや果物を食べる(味覚)
・好きな動物や柔らかな物に触れる(触覚)
自分にとって心の栄養となる方法を見つけておき、仕事中の休憩時間などにこまめに取り入れたいものです。
ところが、「いつも全力疾走している状態からいきなり休息なんてできないのでは?」という疑問も多く聞かれます。そこで、仕事の合間の短い時間でも一瞬にして心身を休息モードに転換する技術として、近年世界の名だたる大企業で社員向けに導入されている「マインドフルネス」が大きな力を発揮します。
さまざまな医学研究でもその効果が証明されている、このマインドフルネスの基本系が「呼吸瞑想」で、誰でも今すぐに実践できるほどシンプルな方法です。「いすや床に背筋を軽く伸ばして楽に座り、目を閉じて(半眼でもよい)、ありのままの息の出入りを感じる」たったこれだけなのです。
時間は数十秒でも数十分でも自由で、呼吸のペースが速かろうが遅かろうが「その時はその時」と受け流すようにします。
私の患者さんの中にも、この呼吸瞑想を取り入れてからプレゼンに落ち着いて臨めるようになった方、顧客からのクレームにも一つひとつ誠意をもって対応できるようになった方など、仕事に生かしておられる方がたくさんいらっしゃいます。
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