09年4月登録販売者導入だが 「コンビニで大衆薬」実現は数年先

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本当に規制緩和か コンビニはお手上げ

消費者のコンビニにおける大衆薬購買ニーズは高い。現行法下でコンビニにおいて大衆薬を販売するには、薬剤師を雇い、レジも別にする必要があるなど参入障壁が高い。それにもかかわらず、ファミリーマートやミニストップなどは高速道路のパーキングエリア内に大衆薬も販売するコンビニを開店させるなど、強い参入意欲を見せていた。今回の改正法では一見、異業種にも大衆薬販売への門戸が開かれたように思える。だが、ふたを開けてみると状況は大きく違っていた。

最大の障壁は、受験資格に実務経験1年以上を課した点。ドラッグストアなどで月80時間以上勤務した経験が必要。しかも、医薬品には季節性があるので最低1年間の連続も要件となった。コンビニ側は「オーナーやバイトを1年間の研修に出すことは不可能」(ファミリーマート)というのが現実だ。加えて、大衆薬を販売している時間は、登録販売者が最低1人は店内にいる必要がある。24時間年中無休で大衆薬を販売し続けるには、一日8時間勤務で3人以上の資格者が必要。しかも手当を付ければ人件費も高くつく。

医薬品は一般的に粗利の高い商品だが、食料品とは違って、毎日、毎時間売れる商材ではない。平均30坪程度という狭い店内で一定数の医薬品を取り扱えば、他の取り扱い商品を削る必要も出てくる。中途半端な規制緩和策に、コンビニ各社はむしろ参入意欲を失ったようにみえる。そもそも、今回の薬事法改正の一連の検討会の構成員には、ドラッグストア関係者ばかりで、コンビニなど異業種の関係者はいない。結局はドラッグストアが出店を拡大するための販売制度改革だったのだ。

ただ、「今後年1回以上のペースで、各都道府県で試験が行われる。登録販売者の人数が増えてくれば、数年先には人材の流動化が進む」(前出のドラッグストア幹部)との見方もある。少なくとも、改正法施行と同時に、コンビニで薬を買えるようになるわけではなさそうだ。


(週刊東洋経済)
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